前回の記事:
株を買えるアニメ会社一覧前回、書いたように、今回は「アニメ会社時価総額ランキング」をやってみたいと思います。
前回の記事も初心者向けに書いてたんですけど、今回も初心者向けです。
というか、そもそも私は上級者向けに株のことを書くなんてことはできないんですけど。
さて、時価総額とは何でしょう?
ライブドアがテレビで騒がれていたときに、この「時価総額」という言葉が何回も出てきてました。
ソフトバンクの孫さんも、一時期、「時価総額経営」なるものを掲げてました。
しかし、株をやってない人には何のことだか分からないと思いますんで、ちょっと説明してみます。
時価総額というのは次の式で表わされます。
時価総額=発行済株式数×株価
時価総額というのは、その会社の発行している株式数に株価をかけたものです。
うん。
これだけじゃ何のこっちゃわけがわかりませんね。
いったい、時価総額というのが何を表わしているんだか、よく理解できないと思います。
ここは、こんなふうに考えてください。
あなたが、ものすごいお金持ちだとします。
お金がじゃぶじゃぶあるあなたは(←うらやましい)、ある会社を買収しようと思いました。
その会社は上場しています。
この会社の発行済株式数は1万株、株価は1000円だと仮定します。
とすると、この会社の株式を100%買い占める(つまり、買収する)のにかかる値段はいくらになるでしょう?
発行してる総株式数が1万株で、株価は1000円なんだから、1万×1000円で1000万円ですね。
つまり、買収するのにかかる値段は1000万円です。
もっとも、市場で株を買い集めるとなると、株価は上がってしまいますし、また、買収するといっても、普通は100%の株式を買い集めたりはしないものなので、この数字はあくまでも目安でしかないですが。
で、今、この会社を買収する値段を計算するときに、発行済株式数×株価という式を用いたわけですが、これは上記した「時価総額」の式とまったく同じです。
つまり、時価総額というのは、その会社の値段なわけです。
アニメ会社の時価総額ランキングという、この企画はつまり、アニメ会社の値段をランキングにしてみようか、っていう意図です。
まあ、すでに、記事タイトルに「アニメ会社の値段ランキング」って書いちゃってますけど。
時価総額ランキングじゃ、何のことだかわかりにくいと思ったもんで。
ところで、時価総額=発行済株式数×株価ということなんですけど、この式のうち、発行済株式数は、基本的に変わりません。
増資といって、株を新たに発行したり、逆に自社株買いをして、消却したりすると、株数は減りますが、基本的に増減しません。
しかし、式の右側の株価は当然、変動します。
株価は日々動いてるものなので、毎日、時価総額は変動しているわけです。
そもそも、株価というのは何なのかというと、株式市場に参加している人たちが、「この会社の株はこれくらいの価値があるよ」とか「いや、この会社の株はそんなに値打ちがないから、売っちゃえ」とか言って、値段をつけたものです。
この値段(株価)というものはどこまで信用できるのでしょうか。
市場に参加している人たちのなかには、頭のいい人もたくさんいるわけで、そうそう変な値段(株価)がついたりはしません。
価値のない株をバカ高い値段で買ってしまうような人は、そのうち市場から退場させられてしまうので、なおさらです。
なので、株価というものは、それなりに適正な価格です。
たくさんの人が参加して、決めているものだから、そこそこは信用できる値段ということになるわけです。
まあ、集合知ってやつですか。
ただし、昔バブルが起こったように、馬鹿げた株価がついてしまうことも、確かにある。
株価が上がる→乗り遅れまいとして株を買う人が出てくる→また、株価が上がる→乗り遅れまいとして株を買う人がまたまた出てくる
みたいなスパイラルで、狂ったような株価がついてしまうこともあるわけです。
だれかが、
「これはヤバい」
と株を売り始めると、雪崩をうったように、株価も急降下。
地獄を見ます。
現在の日本の株価というのは、全体的に見れば、ごく適正価格で、高くもなければ、安くもない、といったところだと、私は思うんですけど、個別の株では、バブルが起こったり、またそのバブルがはじけたりといった現象が見られるものがあります。
たとえば、これ。

これは、自殺志願者が飛び降りる崖を断面化したもの、
・・・・・ではなくて、プロダクション・アイジーの株価チャートです。
2005年の12月に上場したあと、株価はドドドーン!と爆上げ。
最高値は110万円です。
しかし、その後、一気に急降下。
つい最近、9万円台まで落ちましたが、今は持ち直して12万円程度です。
つまり、最高値と現在とでは10倍近くの差があるわけです。
当然、時価総額も10倍くらいの差がついてます。
この間に、プロダクション・アイジーという会社に何か変化があったのでしょうか?
確かに、blood+なんていう駄作を作ってたりはしました。
あのアニメは詰まんなくて、結局最後まで見れなかった。
業績もそれほど良いとはいえません。
というか、2007年度は減益です。
しかし、2008年度は増益予想ですし、株価が10分の1になるほど、すさまじい変化がこの会社にあったわけではない。
これは、上場直後の高値が異常だったのです。
言ってみれば、バブルです。
そういえば、前回の記事は
カトゆー家断絶さんに、「萌え株が話題になった時はやけに盛況でしたが…。 」というコメントを付けていただいたんですけど、『「萌え」関連市場は888億円』というレポートが出て、萌え関連とみなされた、まんだらけなどが急騰したのが、2005年の4月です。
「萌え」関連市場は888億円(PDFファイル)それから半年ほどたって、プロダクション・アイジーの上場をきっかけにして、「萌え銘柄ブーム再来」みたいな感じで、アイジー以外のアニメ株も急騰したり、といったことがありました。
まあ、はっきりいって、無駄な株価上昇です。
というのも、このレポートのなかでは、最近「萌え」関連市場が急拡大した、ことには触れられてますが、これからも急拡大するだろう、ということはどこにも書かれていない。
ちょっと見てみると、2005年12月から2006年1月をピークにして、それから株価が下がり続けているアニメ会社がかなり多いです。
当のプロダクション・アイジーもそうですし、他にはバンダイビジュアル、マーベラス、GDH(ゴンゾ)なんかもそう。
GDHは株価がほぼ十分の一に。

当時のアニメ会社の株価は高すぎた、と思いますが、今の株価はそれなりに正常なような気がします。
というか、アニメ会社は将来が悲観されているせいか、どちらかといえば割安なんじゃないかと個人的には思う。
先ほど、時価総額は会社の値段だと書いたんですけど、正確に言うと、時価総額というのは、市場参加者がつけた会社の値段です。
だから、バブル状態にある株(昔のアイジーみたいなやつ)は、その会社の実体を表わしているとはいいにくい。
今のアニメ株を見てみると、「なんで、こんなクソ株がこんなに高いんだ?」みたいなのは、あまり見当たらないんで、このランキングは、そこそこ実体を映してるんではないか、と思います。
さて、それじゃ、実際にランキングを作ってみることにします。
しかし、ただ時価総額順に並べただけじゃ、芸がないか、と思ったんで、他の数値も付け加えてみることにしました。
今回は、こんな感じのフォームで書いてみます。
[時価総額]
上で書いたように、株式市場がつけた会社の値段です。
[会社名]
証券番号も付け加えてます。
[自己資本比率(安全度)]
思いっきり簡単に言うと、借金をすればするほど、この比率が下がります。昔は金利を払わないですむので、無借金経営が一番とされていたんですが、ファイナンスの考え方が一般的になってからは、どこの会社もある程度の借金(有利子負債)をするようになってます。一般的に言って、30%くらいが適正とされていて、20%以下になると危険とみなされます。
無借金経営の場合は、(無借金経営)とカッコ書きしています。
当たり前ですが、無借金経営の場合、倒産することはまずないので、安全度は極めて高いです。
[ROE(儲かってる度)]
日本語で言うと、自己資本利益率。簡単に言うと、自己資本(株主資本)を使ってどれだけ儲けられるか、ということ。あ、全然簡単じゃなかった。
一般的に言って、15%以上だと、優秀だとみなされます。
[代表作]その会社の代表作アニメ。前回もやったので、適当にぶちこんでおきました。
なんか、自己資本比率とか、ROEとか難しい単語が並んでますが、それぞれ、安全度(倒産しにくい度)、儲かってる度、だと考えてもらえばよいです。
まあ、「儲かってる度」は本当はROEじゃなくて、ROAのほうがいいかとも思ったんだけど、ROEのほうがよく使われる指標なんで、ROEにしときました。
さて、アニメ会社のランキングをする前に、このフォームを使って、有名企業を紹介してみたいと思います。
まずは、日本全体で見ると、どこの会社が時価総額一位なのでしょうか?
アレだろ?あの会社だろ、どうせ、あの会社なんだろ?という声が聞こえてくるような気がするんですけど、まあ、あの会社です。
時価総額ランキング日本一!
[時価総額]
27兆円(残りの端数はめんどいので省略)
[会社名]
トヨタ自動車
7203(東証一部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
36.6%
[ROE(儲かってる度)]
13%
[代表作]
カローラ、クラウン、プリウス、レクサス
(↑なんか適当)
皆さんの予想通り、トヨタが一位でした。
そりゃそうだろ、って感じの結果ですが。
時価総額27兆円ということは、つまり、株式市場が「トヨタは27兆円の価値がある」とみなしている、ということですね。
トヨタみたいに大きな会社だと、ウォッチしている人もたくさんいるので、あまり変な値段がつくことはないです。
ついでに、これ以下の、時価総額ランキングは、
2位三菱UFJフィナンシャル・グループ 14兆円
3位みずほフィナンシャルグループ 9.9兆円
4位キヤノン 9,5兆円
5位三井住友フィナンシャルグループ 8.8兆円
となってます。
なんか、トヨタが圧倒的一位。
ところで、日本企業全体の時価総額ランキングを見ていたら、10位と11位の企業がすごく面白かった。
その並びを見てると、ちょっと笑えるんですけど、これは、次回の記事に使わせてもらうので、今は書きません。
その他にも、気になる企業を二、三見てみます。
[時価総額]
2兆8984億円
[会社名]
ソフトバンク
9984(東証一部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
6.2%
[ROE(儲かってる度)]
23.7%
[代表作]
Yahoo!
[時価総額]
5143億円
[会社名]
楽天
4755(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
14.6%
[ROE(儲かってる度)]
1.4%
[代表作]
楽天市場
この二つの日本を代表するIT企業の有利子負債(借金)は、いつ見てもすごいです。
楽天5400億円!に、ソフトバンク2兆3千億円!!!
うーん、2兆円の借金を背負うってのは、どんな気分なんだろう。
想像がつかない。
それから、ソフトバンクの[ROE(儲かってる度)]が23.7%と高い数値が出てますが、このROEというのは、借金をしてレバレッジ(てこ)を効かせると、高い数値が出てしまうものなので、「ソフトバンクは儲けてるんだ」と思わないようにしてください。
はっきり言って、ソフトバンクは儲けてません。
[アニメ会社時価総額ランキング]なんか、すんごく前置きが長かったような気がしますけど、やっと、アニメ会社の時価総額ランキングです。
このランキングには、角川、東北新社、インデックスは含めてません。
アニメ会社というのには、無理があるので。
これらの会社は別に示すことにします。
なので、東映アニメーション、トムス・エンターテイメント、プロダクション・アイジー、GDH、ウエッジホールディングス、マーベラス、バンダイビジュアル、ウィーブ、創通の9社でのランキングとなります。
さて、どの会社が時価総額一位なのか、自分でもよくわかってないので、今から調べながら書いていきます。
ちょっとだけ、ドキドキするなー。
1位!!!
[時価総額]
463億円
[会社名]
東映アニメーション4816(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
82.6%(無借金経営)
[ROE(儲かってる度)]
13.61%
[代表作]




2位
[時価総額]
368億円
[会社名]
バンダイビジュアル4325(東証一部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
60.1%(無借金経営)
[ROE(儲かってる度)]
20.11%
[代表作]




3位
[時価総額]
177億円
[会社名]
トムス・エンターテイメント3585(名証2部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
79.1%
[ROE(儲かってる度)]
9.72%
[代表作]



4位
[時価総額]
120億円
[会社名]
創通 3711(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
77.3%(無借金経営)
[ROE(儲かってる度)]
9.24%
[代表作]



5位
[時価総額]
48億円
[会社名]
GDH3755(マザーズ)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
25.7%
[ROE(儲かってる度)]
-80.19%(赤字のためにマイナス、営業利益もマイナス)
[代表作]



6位
[時価総額]
47億円
[会社名]
プロダクション・アイジー3791(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
71.2%
[ROE(儲かってる度)]
5.2%
[代表作]



7位
[時価総額]
35億円
[会社名]
マーベラスエンターテイメント 7844(東証2部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
19.6%
[ROE(儲かってる度)]
-57.92%(赤字のためにマイナス、営業利益も赤字)
[代表作]




8位
[時価総額]
13億円
[会社名]
ウィーヴ 2360(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
34.6%
[ROE(儲かってる度)]
-62.47%(赤字のためにマイナス、営業利益は黒字)
[代表作]


9位
[時価総額]
12億円
[会社名]
ウェッジホールディングス2388(ヘラクレス)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
39.5%
[ROE(儲かってる度)]
-48.35%(赤字のためにマイナス、営業利益は黒字)
[代表作]


このランキングを作っていてまず思ったこと。
それは、
赤字の会社がすんごく多い!!!いや、GDHが赤字だということは知ってはいたけど、その他にも、マーベラス、ウィーブ、ウエッジと、ここまで多いとは思わなかった。
特に、GDH、マーベラスの両社は、本業の儲けを表わす営業利益でも赤字なんで、かなり大変です。
しかし、GDHなんて数年前までは、この10倍の時価総額があったわけで、それって異常だと思う。
当時は、一応黒字ではありましたが、その当時の時価総額は創通の二倍以上でした。
創通といえば、ガンダムの版権持っていて、何も仕事をしなくても金が入ってくる、という恵まれた会社ですよ。
なぜ、そんな会社よりもGDHのほうが評価されていたんだか、わけがわかりません。
今の株価のほうが、ずっと妥当だと思います。
しかし、ここまで赤字の会社が多いと、アニメ関連株が売られてしまうのも納得できるかも。
ランキング全体の話をすると、東アニが一位、バンビが2位、トムスが3位でした。
バンビが一位かな、と思ってたんだけど、一位は東アニ。
最近、業績がいいですからね、東アニ。
さて、このランキングを見てみると、古い会社が上のほうにランクしていて、新しめの会社が下のほうにきています。
その境目になっているのが、4位と5位のところで、そこから上の東アニ、バンビ、トムス、創通なんかは、かなり歴史のある会社です。
そこから下は、GDH、マーベラス、プロダクション・アイジーなど新らしめの会社が多い。
つまり、古めの会社の値段(時価総額)は高く、新らしい会社のそれは小さいわけですが、なぜ、そうなるのかっていうことを、自分なりに説明したいと思います。
まあ、どの業種でも、古い会社のほうが大きく、新しい会社は小さいもんなんで、わざわざ説明する必要もないような気がしないでもないですけど、そこをあえて。
私が思うに、この差が出てくるのは以下の二つの理由によるものではないか、と。
[過去の遺産]バンダイビジュアルが機動戦士ガンダムDVD-BOXを売り出したのは、つい最近のことです。

このファーストガンダムのDVDはかなり売れたらしいです。
創通が最近ヒットアニメをプロデュースしたか、っていうと記憶にないんですが(ガンダムSEEDを除く)、それでもこの会社が安定した収益をあげているのはガンダムのおかげ。
もっとも、DVDの収益は創通には入りませんが。
ファーストガンダムがいつ放映したのかっていうと、1979年。
今から30年近く前の話です。
30年も前のアニメで未だに稼いでいるわけです、バンビと創通って。
(ところで、ガンダムORIGINのアニメ化って話はないのかなあ。ダブルオーなんかより、ずっと需要があると思うんだけど)
次に東アニの決算短信を見てみます。
平成19年3月期 決算短信(PDFファイル)
[映像制作・販売事業]
(前略)「ドラゴンボールZ」の単巻DVDや劇場版DVDーBOXに加え、「ゲゲゲの鬼太郎」「北斗の拳」「Dr.スランプ アラレちゃん」のDVD-BOX等が好調に推移したため、大幅な増収となりました。ここで出てる「ゲゲゲの鬼太郎」は「DVD−BOX」という言葉があることから、現在放映中のものではなく、昔放映してたやつです。
Wikipediaによると、
原作同様に親しまれているアニメ版は2007年現在まで1960年代・1970年代・1980年代・1990年代・2000年代と、各年代ごとに5つのシリーズ作品が製作されている。70年代以降のシリーズは約11年周期で製作され、ある程度の規則性も認められるが、これが製作側の意図するものなのか、偶然なのかは不明である。と、5つもシリーズがあるらしいんで、どれが売れたんだかわかりませんが、とにかく昔の「鬼太郎」が、今も収益に貢献している、と。
その他にも、ドラゴンボールZ(1986年〜1996年)、北斗の拳(1984年〜1988年)、Dr.スランプ アラレちゃん(1981年〜1986年)と、かなり昔のアニメが未だに収益を上げています。
こうしてみると、古いアニメ会社のほうが、圧倒的な優位にたっているのは当然のことです。
新作アニメだけでなく、古いコンテンツからも収益をあげられるわけで、収益力が新しい会社とは全然違う。
カレイドスター(GDH)、蟲師(マーベラス)という人気作を保有していても、そりゃ、ガンダム、ドラゴンボールにはかないません。
[製作委員会方式]製作委員会方式
-Wikipedia映画などのエンターテイメント作品を作製する時には、その作品の興行が上手く行かなかった場合に大きな負債を抱えてしまうというリスクが存在する。実際に、製作した映画が振るわなかったため倒産・合併に追い込まれた会社も少なくない(例:映画『ファイナルファンタジー』の不振による、スクウェアとエニックスの合併)。このために、リスクを分散するために考案された手法である。
製作委員会方式では、複数の会社に出資を募り、リスクを分散する一方で、利益を出資比率に準じて分配する。スポンサー企業にとっては、1作品への投資を減らすことができるため、1社が多くの作品に関与することが可能となる。そのため、製作委員会方式は映画製作費を調達することを容易とした。現在、邦画市場が空前の復活を果たしているが、これは製作委員会方式のため、テレビ番組制作企業が映画業界への進出が容易になったためとされる。近年のテレビアニメの本数増加も製作委員会方式の導入によるところが大きい。涼宮ハルヒの憂鬱のOPの最後に「SOS団 」っていうクレジットが出てるんですけど、これが涼宮ハルヒの憂鬱の製作委員会の名前です。
他にも、
魔法少女リリカルなのはーなのはPROJECT
ローゼンメイデンー薔薇乙女製作委員会
瀬戸の花嫁ー瀬戸内魚類協同組合
まなびストレートー聖桜学園PTA
これらは、みんな製作委員会の名前。
こういう、凝った名前をつけなくても、普通に「○○○(作品の名前)製作委員会」って名前のやつもあります。
『灼眼のシャナ』製作委員会 とか、ゼロの使い魔製作委員会とか。
さて、Wikipediaの、この項には、「深夜アニメはほとんど製作委員会方式で作られている」と書かれているんですが、これが問題。
というのも、「製作委員会方式では、複数の会社に出資を募り、リスクを分散する一方で、利益を出資比率に準じて分配する」ことになっているので、そもそも「お金」がない会社は出資できません。
ということは、当然、利益を分配してもらえないわけです。
利益は出資比率に応じて分配するわけですから。
以前、どこかで、「プロダクション・アイジーのIR資料が面白いんで、いつか紹介してみたいと思います」みたいなことを書いてたんですけど、そのまま紹介するのを忘れてました。
本当は、一つの記事として書きたかったんだけど、まあ、いいや。
ここで紹介してみます。
プロダクション・アイジー説明会資料この資料のなかで、「業界の状況」という一節があり、これが結構面白い。
「制作費は前年比若干の増加であるが、これを430社で分け合う構造。制作だけでは頭打ちの状況」
「圧倒的に大きい二次市場(版権)が収益拡大の鍵」という文が見えます。
それに続いて、
「制作会社は下請けになることが多く、ヒットのリターンを得ることができない状況が続いた」
「現在、各社とも利益率の高い版権収入を確保する方向に動いている」と書かれています。
つまり、ただアニメの制作をしていただけでは儲からない、ということです。
たとえ、そのアニメがヒットしたところで、儲かるのは「製作委員会」に出資できる広告代理店、テレビ局などの「資金力のある」会社だから。
「製作委員会」に出資していない、下請けの制作会社が手にするのは、雀の涙ほどの制作費でしかない。
IR資料に、こういうことが書かれているということは、プロダクション・アイジーの上場も、版権を確保するための資金集め、というちゃんとした目的があってのことかもしれません。
いやー、ただ単に、証券会社にそそのかされて上場しただけなんじゃないか、と思ってましたけど。
意外にちゃんとしてたのかも。
さて、何の話をしてたんでしたっけ?
そうそう、古いアニメ会社のほうが有利、という話です。
今、述べた「製作委員会」の話を勘案してみると、要するに、アニメで収益をあげるには元手(お金)が必要だ、ということです。
では、これらのアニメ会社の資金力を見てみましょう。
このランキングに登場してくるアニメ会社の、現金同等物(要するに持ってるお金)から有利子負債(要するに借金)を引いて、資金力を見てみます。
本当は、売掛金、買掛金を足したり引いたりして、フリーキャッシュフローを出したほうが、会社の実態を表わしているんですけど、その数字の出し方をすっかり忘れてしまったので、簡便な方法で表わします。
これでも、目安としては有効なはずです。
(手元にあった四季報使ってるんで、数字がちょっと古いかもしれません。だけど、そう変わってはないですから)
では、ランキング順に。
東映アニメーション
122億円(無借金経営)
バンダイビジュアル
97億円(無借金経営)
トムス・エンターテイメント
71億円(ほぼ無借金経営)
創通
54億円(無借金経営)
GDH
-47億円(有利子負債が63億円)
プロダクション・アイジー
13億円(ほぼ無借金経営)
マーベラス・エンターテインメント
-22億円(有利子負債が30億円超)
ウィーブ
10億円
ウエッジ・ホールディングス
4億7千万円
古いアニメ会社は、過去のコンテンツでも儲けられるから、収益力がある、ということを上で書いたんですけど、その収益力というのは、財務体質に如実に現れていて、東アニから創通までの一位から4位までは、ほぼすべて無借金経営です。
しかも、どの会社もかなりのキャッシュリッチ。
それに対して、歴史の浅い会社である、GDH、マーベラスなんかは、有利子負債のほうが大きいです。
もっとも、一般的に言えば、これくらいの有利子負債というのは、そう珍しいことではないです。
どっちかといえば、上位の4社が、普通の会社と比較すると「金を持っている」という感じだと思います。
アイジーは歴史が浅いわりには、金を持ってますね。
上場したことで集めた資金もあるでしょうし。
ウィーブ、ウエッジはよく知らないのでスルー。
さて、版権を得るには、製作委員会に出資しなければいけないわけですが、こうして資金力を見てみると、これは上位の4社のほうがずっと有利な状況におかれていることが分かると思います。
アイジーのIR資料に書かれていたとおり、「版権収入を増やさないと成長できない」わけですから。
版権を得るための資金を持っているのは、明らかに時価総額ランキング上位の、古いアニメ会社。
しかし、そう考えてみると、新しめの会社の株を買う理由っていうのが、見当たらないんですよね。
普通、古い会社よりも新しい会社の株を買うのは「成長性に期待して」買う場合が多いわけですが、アニメ会社の場合、古い会社のほうが、資金力があるので成長が期待できる、ということになってしまいますから。
[訂正]http://www.smrj.go.jp/keiei/chosa/021413.htmlここの「コンテンツ産業の方向性に関する調査研究」を読むと、著作権を獲得することだけが、成長の条件というわけではないみたいです。
かえって、著作権を保持してない企業が黒字だったりもするらしい。
もっとも著作権を獲得してからの資金回収には時間がかかるわけで、一概には言えないわけですが。
しかし、ここ数年はアニメ製作バブルだったので、著作権を保持しないで制作に専念しても成長することは可能だったんでしょうが、この状態がそう長く続くとも思えないので、これからもこの状況が続くかどうか、ってのは難しいところだと思います。
また、著作権を獲得しても、アニメってのは当たり外れがあるわけだから、そう簡単にはいえないのかな、と。
ガンダム、エヴァレベルのヒット作の著作権を保持してれば、そりゃ儲かるに決まってますが、ガンダム、エヴァクラスのヒット作なんて、そう出ないですしね。
これで終わりなんですが、アニメ関連の角川、インデックス、東北新社の時価総額も以下に書いておきます。
[時価総額]
858億円
[会社名]
角川グループホールディングス9477(東証一部)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
57.9%
[ROE(儲かってる度)]
4.71%
[代表作]
[寸評]
角川というと、「金にガメつい」会社だと思われてますが、ROEを見てみると、この会社は儲けるのが下手な会社です。
角川よりもバンビのほうが、ずっと儲ける力は強い。
バンビはROEが20%を超えてますが、無借金経営でROE20%超えというのは滅多にありません。
まあ、角川の場合は出版事業を抱えてますんで、利益率が低く出ちゃうんでしょうけど。
[時価総額]
846億円
[会社名]
インデックス・ホールディングス4835(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
47.0%
[ROE(儲かってる度)]
4.59%
[代表作]
[寸評]
携帯コンテンツを扱っている会社はどこも苦しいみたいです。
この会社も株価は下がり続けてます。
[時価総額]
561億円
[会社名]
東北新社2329(ジャスダック)
Yahoo!ファイナンス[自己資本比率(安全度)]
42.5%
[ROE(儲かってる度)]
3.47%
[代表作]
[寸評]
この会社はライフカードのCM作ってるみたいです。
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