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2007年01月25日

秘密さえ設定しときゃ、あとは勝手にドタバタしだすんだよ、バカヤロー! その一

具体例「みゆき」
ラブコメの作り方 その一



登場人物がなんらかの秘密を抱えている、ってのはラブコメによくあるパターンのひとつです。
ほら、あんなのやこんなのとか、いろんなマンガ、アニメが頭に浮かんできたでしょ?


「秘密を抱えている」という設定は、「他人にその秘密をしられてはいけない」という登場人物のなかでの行動規範と、またその秘密がバレそうになって、登場人物があたふたする、というドラマ上のドタバタを簡単に演じさせることができるので、すごく便利です。
便利だからこそ、ラブコメにはよく「秘密を抱えた登場人物」がでてくるのです。


「秘密を抱えている登場人物」が一人である場合と複数である場合があります。
その両パターンを具体例をあげながら、見ていきましょう。


1 秘密を抱えているのが一人な場合 「みゆき」


あだち充の書いたこのマンガは1980年から1984年にかけて連載されていました。
「タッチ」が1981年から1986年に連載ですから、ほぼ同時期の作品です。

ストーリーをかいつまんで説明すると以下のとおり。

鹿島みゆきは、成績優秀、料理裁縫の腕前も優れ、おしとやかで何の非の打ち所もない美少女。
ところが、どうした風の吹き回しか、何のとりえもない主人公の若松真人に惚れている。
で、この二人は付き合っているのだが、真人はなかなか彼女との仲を進展させることができない。
というのも、彼には同じ名前のみゆきという妹がいるから。
この若松みゆきは実は血のつながっていない、戸籍上だけでの妹で、真人さえその気になれば恋人にだってできる存在だからである。


この、「みゆきが実は血のつながらない妹である」という秘密は真人しか知りません。
(その秘密を妹のみゆきも知っていたということが最後で明らかにはなりますが)
で、若松みゆきも、鹿島みゆきに負けず劣らずの美少女なので、他の男に言い寄られるわけです。
それで、兄の真人はやきもきしたり、悶々としたりしますが、最終的に若松みゆきは真人のことをいちばん大事に思ってるというエピソードが挟まれて終わる、っていうパターンが何回もでてきます。


この秘密を知っているのは、真人だけということになっているので、当然、真人と他の登場人物のあいだには「認識のズレ」が生じています。
若松みゆきは、複数の男から同時にアプローチされています。
だから、その複数の男たちは互いをライバル視しているのですが、そのライバルの輪のなかに真人は入っていません。
彼はみゆきの兄であるとみなされているので、恋のライバルとはみなされないわけです。
なので、竜一や安二郎といった、みゆきへの求愛者は、真人の機嫌をとろうと猫なで声で近づいてきたりするのです。
ところが、真人は自分自身を、彼らと同じ「若松みゆきへの求愛者」になりうる存在である、と認識しているので、彼らのことをこころよくは思いません。
若松真人という存在は、他から見たときと、真人本人から見たときでは認識にズレがあるわけです。


たとえば、漫才というものはボケとツッコミに分かれています。
ボケの人間が、常識はずれなことを言ってみせて、それをツッコミが常識に則った観点からその常識はずれを矯正するというのが、漫才の基本パターンです。
つまり、漫才のボケというものは、「認識のズレ」を無理やり作り出す存在だということです。
そして、漫才を見れば分かるように、認識のズレた人間というものは笑いの対象に他なりません。


「秘密を抱えている」人間というものは、他の人間とは異なった世界認識をします。
つまり、登場人物になんらかの秘密を持たせておけば、それだけで笑いが起こる土壌ができあがってしまうというわけなのです。
そして、できればその秘密は物語を根本から変えうる秘密であることが望ましい。

たとえば、「成績優秀、運動神経抜群、どこから見ても欠点のない美少女だが、実は悪性の水虫に犯されていて、いかなるときでも靴を脱ぐことができないヒロイン」なんてものがいたとしても、ラブコメ要員にはなりません。
そりゃ確かに彼女の「水虫」は秘密には違いないし、水島まこと(あ、これはいま私がつけた彼女の名前です)もその秘密をバレないように必死でしょうが、水虫を必死に隠し続けようとする水島まことの話だけでは、ストーリーが持ちません。


いっぽう「みゆき」では、ラストで真人が「実はみゆきが実の妹でない」ことをみんなに告白し、みゆき(妹のほう)と結ばれます。
これは物語の根本のところに秘密を設定していたから、こんなふうに物語を大きく動かすことができるのです。
水虫を隠すことだけに必死だった、水島まこととはえらい違いです。

やっぱり、「みゆき」のように物語の深いところまで食い込む秘密を設定しなきゃいけないのです。

次回は「秘密を複数で共有している場合」です。



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