前回の記事で、
「原作小説の「時をかける少女」はつまらないけど、アニメ映画「時をかける少女」は面白かった」
みたいな趣旨のことを書いた。
この記事を書いたあとで、筒井康隆が「時をかける少女は書きたくて書いた作品ではない」という発言をしていることを知ったんだけど、やっぱ、筒井自身も、この小説がそう大したもんじゃない、と思ってるんだなと思った。
だいいち、筒井康隆という小説家のスゴさってのは、「時をかける少女」の中にはぜんぜん現れてないわけだし。
で、私は、小説「時をかける少女」が×で、アニメ「時をかける少女」を○と評価したわけだけども、それじゃあ、具体的にどこがどう違っているんだろう?
どうして、こんなに真逆の評価になるのだろう。
ということで、今回は、小説とアニメの相違点を検証してみることにします。
プロット部分での比較が多めかもしれないです。
まず、最初に書いておかなければならないことがあって、小説とアニメじゃ登場人物の名前が違っている。
小説(アニメ)
芳山和子(紺野真琴)
深町一夫(間宮千昭)
浅倉吾朗(津田功介)
これは、単に登場人物の名前が変わっているということではなくて、アニメは、小説の世界から20年後という設定になっているらしく、小説のヒロインの芳山和子は、アニメのほうでは、真琴のおばさんとして登場している(このこと自体は作中では触れられてない)。
個々のキャラの性格もかなり違う。
しかし、基本的な役割は小説もアニメも変わらない。
芳山和子(紺野真琴)は、ひょんなことからタイムリープの特殊能力を身に付けた女の子だし、深町一夫(間宮千昭)は未来人という設定も同じ。
なので、これらの対応する人物は同じキャラとみなして話を進めます。
相違点@「自分の意思でタイムリープできるかどうか」

真琴(アニメ)は、カラオケをしまくりたい、とかの下らない目的でタイムリープを何度も使うわけだけど、和子(小説)はそういう目的のために使わない。
というか、和子が自分の意思でタイムリープするのは、最後の一回だけ。
それまでは、自分の意思でタイムリープすることはできず、事故にあうとか、または事故にあいそうだ、という緊急事態にしかタイムリープすることができなかった。
アニメでは、自由自在に自分の意思でタイムリープできるという可能性を示すことによって、今生きている「時」が取り返しのつかない「時」であることを逆照射する形になっていることは前回述べたんだけど、こういう構造は小説にはない。
相違点A「秘密を知っている人間の数」

小説では、タイムリープしてしまった後に、和子が自分の秘密を深町一夫、浅倉吾朗の二人の友達に打ち明けている。
また、その後、福島先生という理科の先生に相談するシーンもある。
アニメだと、真琴が相談するのはおばさん(和子)ただ一人。
テンポの良さであまり気にならないけど、よくよく考えてみると、アニメで真琴が千昭、功介に何も相談しない、っていうのはかなり不自然。
あれだけ仲が良いんだから、普通だったら相談するはず。
別に他の人間にタイムリープの秘密を知られたらいけないとかの禁止事項があるわけじゃないんだから。
ここらへんはストーリー展開に不要なものをあえて省いてる感じがする。
相違点B「小説では深町一夫(千昭)の告白シーンがない」

いや、あるんだけどね。
一応、あるんだけど、これはラストシーンで、深町一夫の正体がわかった後での和子への告白という形。
それまでは、この二人の間に恋愛感情があるんだかないんだか、かなり微妙な描かれ方をしてる。
これが、小説「時をかける少女」を淡白にしてるところ。
相違点C「ラストシーンに至る流れ」

小説では、タイムリープ能力を得ることになった時間まで遡ってきた和子が、実験室で待ち構えていたところに、深町一夫が登場。
真相がわかる、という流れ。
アニメだと、真琴が実験室に隠れてるところまでは一緒だが、そこから、功介を探し出す、千昭からタイムリープのことを問いただされる、そして功介の事故シーン、という流れで真相発覚。
こうしてみると、アニメ版は二重、三重に手が加えられてるなー、という印象。
小説は、ここでもそうなんだけど、淡白すぎるんだな、これ。
あっさりしすぎてる。
他にも、タイムリープの引き金になったのが、ラベンダー(小説)とくるみ(アニメ)とかの相違点はあるけど、そこらへんは瑣末なことじゃないかと思います。
こうやって一覧にしてみると、アニメは小説に何を付け加え、また何を省いたのかが見えてくる。
まず最初に省いたものから言うと、タイムリープに関するウンチク。
小説のほうでは、タイムリープとは何か、みたいなウンチク話が結構あるんだけど、アニメ版では秘密を知っている人間の数を減らすことによって、ウンチク話を回避してる。
おばさん(和子)は、かつてのタイムリープ経験者という裏設定があるので、タイムリープに関するウンチク話をしそうなもんであるが、それは必要最小限にとどめられている。
ここらへんは、話のテンポを上げるために、わざと省いたところなんじゃないか、と。
それで、付け加えられたもののほうは簡単で、まあ、恋愛。
真琴の恋愛感情の芽生えみたいなのはかなり詳細に描かれている。
それと、タイムリープできる回数。
小説のなかでタイムリープするのって、たしか三回だけだし。
アニメでいったい何回タイムリープしたのかは覚えてないけど、まあ、とにかくいっぱい。
くよくよ悩んだりするよりも、体で行動するのが真琴というキャラクターなんで、それを表現してるのか、と思う。
それと何度もタイムリープすることによって、繰り返しのギャグを作ってるのは、見た人ならご存知の通り。
これで終わりなんだけど、蛇足ながら、小説のヒロイン、芳山和子のキャラにも触れておきたい。
昔の小説、ということもあってか、この芳山和子の言葉遣いが古い。
とても古い。
これは四の五の言うより先に、実例を見ていただければわかると思うので、以下は小説「時をかける少女」からの抜粋。
和子はふと不審なことに思いあたり、一夫に尋ねた。
「あなたは、どうしてわたしに、こんなにいろんなことを説明してくださるの?」
一夫はしばらく考えてから、答えた。
「そりゃ、きみがいろいろなことで悩んでいたから、説明する義務があると思ってさ」
「だって、あなたにとって、わたしは過去の人間でしょう?あなたが未来へ帰ってしまえば、あなたとわたしの間には、何のつながりもなくなるのに・・・・・・・」
一夫は、しばらく、困ったような表情で、下を向いていたが、やがて和子の顔をまともに見ると、思い切ったように、こういったのである。
「じゃあ、いってしまおう。きみが好きになったからさ」
「まあ!」
和子はあきれてしまった。なんておませなんだろう!
なんておませなんだろう!なんておませなんだろう!なんておませなんだろう!
萌えーーー
られない。
