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2007年09月10日

もってけ!セーラーふくってアニソン向き?

今ごろ、もってけ!セーラーふくに触れるのって周回遅れもいいところなような気がしてならないんですけど、まあそこらへんはあまり気にせんと。

色々な人が、もってけ!セーラーふくについて書いていてそれを読んでたら面白くなってきたので、自分も書いてみようかと。周回遅れで。二周遅れで。三周遅れで。

自分の目についたのをあげるとここらへん。

J-popは「もってけ!セーラーふく」に敗れたのか?
ラップとして「もってけ!セーラーふく」を評価する
音楽ファンはアニオタと一緒にアニソンを歌え!
アニソンとJ-POPにはそんなに違いはないんじゃないかなあと思う話
タイアップ効果の低下とJ-POP、そしてアニソン


このなかでいちばん面白かったのはコレ。

ラップとして「もってけ!セーラーふく」を評価する

従来の日本のラップは印欧語族的(というよりつまり英語的)構造を
そのまま輸入したものだった。
それは強勢アクセントを模倣したリズム、脚韻中心の詩学理論、機能和声(コード)の厳格な縛りであり、
高低アクセント、モーラ拍のリズムによる詩(短歌・俳句)、モノフォニー的詠歌の日本語とは本来相容れない。
(中略)
もってけ! セーラーふく は、
冒頭のラップにおいてコードはF7に固定だが、メロディラインは日本語の高低アクセントに委ねられている。
そして、これが重要だが、英語的な強勢アクセントを人工的につけてはいない。
(中略)
西洋音楽の基本であるコード・リズム・メロディの3要素を
全て「日本語の構造」で解決したことがこの曲の真価だと思う。


要するに今までのラップが日本語を英語風の発音ですることによって、日本語でラップをやることの困難を克服してたのに対し、もってけ!セーラーふくは逆に音楽を日本語発音に近づけることでその困難を解決してるっていう話。

これを書いた人はスゴい。
私にはとてもここまで書けやしないな。
2ちゃんねるってたまに、こういうスゴい人いるよなあ。

ところでラップを日本語的にやろうとしたのはもちろん、もってけ!セーラーふくが初めてだというわけじゃない。

たとえば、これはTOKYO No.1 SOUL SETというバンドのベストアルバムのプロモ映像。
これらの曲のなかには10年近く前に作られた曲もかなりある。



ラップ部分が始まるのは1分20秒過ぎ。

ラップだと思ってこれを聴くとたぶんビックリすると思う。
なにしろ、ただ喋ってるだけ、に聴こえるから。
ほとんど詩の朗読に近い。

これは曲が短いのでわからないだろうけど実際にこれらの曲を聴いてみると、とても気持ちいい。
言葉の持つリズム感が伝わってくる。
つまり音楽的にちゃんとラップとして機能している。

日本語のラップをやるときにそのまま日本語として喋ってみるっていうのはコロンブスの卵的な発想だけど、こういう方法だって全然アリなのだ。

TOKYO No.1 SOUL SETを聴くと他の日本語のラップというものが、いかに英語風の発音でやられているのかということがよく分かる。
それは上のアルファルファモザイクの記事どおり。


[それがアニソン向きの曲かどうかが一発でわかる方法]

ずいぶん前になるんだけど「日本語ロック論争」について触れたことがある。
そのとき参照させてもらったのがここのサイト。

日本語ロックの生き証人

簡単に事の経緯を説明すると、ニューミュージック・マガジンという雑誌で1971年の第2回日本のロック賞金賞を、日本語歌詞でロックをやっていた「はっぴいえんど」が受賞した。
それに対して、「ロックは英語でやらなければいけない」と考える内田裕也が噛み付いて、日本語でロックをやることの是非が議論された、っていう話。

蛇足なんだけど、この論争が行われたニューミュージック・マガジンというのは後にミュージック・マガジンと名前をかえている。
今でもちゃんと発行されている。

石井恒
前回、そのうち水樹奈々が声優初の1位を取るわ、
と予測したのも束の間、事態は新展開。
声優女4人による6位「もってけ!セーラーふく」が、
この前の周で声優アニメソングショドウ新記録満6千枚売って
2位かと思いきや、1位のV6は内容違い3種って悪徳商法で
6万8千枚だったから、まとめ買いのアニメオタクもいたにせよ
実質1位かも。
今週も上位にいやがるのがキモいわね。
しかも、女どもの嬌声と電子音、そしてファンキーなベースと
フリー・ジャズ風のサックスが、
それぞれ死ぬ気のカーチェイスのように暴走しまくり、
桑田じいさんのボケ曲より音楽的にオモロいのもキモいの。
ロックから消えた狂気がアニメソングにあったとはね。
停滞気味のJポップ界に新しい波がアニメソングになるのはイヤだけど、
こんな絶望的にキモいのが堂々と売れる変態的な日本は好き。
だってわたしも変態だもの。


この記事が書かれた雑誌がそのミュージック・マガジン。
この石井っていうオカマは毎号オリコンのチャートについて書いているんだけど、ミュージック・マガジンの記事のなかではいちばん面白いと思う。
しかし、オカマのくせしてジャニーズには全般的に厳しいような気がするんだけど、ジャニーズとかの美少年は好みじゃないんだろうか。

MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2007年 07月号 [雑誌]
これが例の記事が載ってる号。


話がズレたので元に戻すと、昔「日本語でロックをやるべきかどうか」っていう議論があった、と。

この例でわかるように、ロックに限らず、ポップミュージックというのは基本的に英語でやることを前提としたものなので日本語でするのは難しい。
日本語の場合、特にほとんどすべてのモーラが母音で終わってるのでなおさらリズムに乗りにくい。
(もともとモーラ知ってますよ、常識じゃない、モーラぐらい・・・的な態度で書いているけど、実はモーラって言葉を今回初めて知った。モーラ(Wikipedia) 知ったか)

それで、こういう輸入文化ゆえの困難があったときに二つの方法がある。

1日本語を英語風にする
2日本語の発音を活かして音楽のほうを工夫する

「1日本語を英語風にする」は別に英語風にするだけじゃなくて、たとえば文節を思いっきり無視するなんていう方法もある。
たとえば宇多田ヒカルなんかは、よく文節を崩して歌ってる。

First Loveだっけか。

なっ |なかいめの |べ |るで

こう聞こえる。
だけど本当の文節だと、

七回目の |ベルで 

こうなるはず。

宇多田なんかは「1日本語を英語風にする」の方法でやってるわけだ。

これは私だけなのかもしれないけれども、日本語のポップミュージックを聴く楽しみっていうのはこういうところにある。
もともと日本語でポップミュージックをやるのは困難だ。
だけど、その困難のなかでいろいろと試行錯誤しているのを見てる(聴いてる)のが面白い。

それで「1日本語を英語風にする」のもそれなりに見ていて面白く、また興味深くもあるんだけど、私の場合「2日本語の発音を活かして音楽のほうを工夫する」のほうがずっと面白く感じる。というか、はっきり言えばそっちのほうが好きだ。

これは別にナショナリズム的な感情ではない。
いや多少はあるんだけどね、そういうナショナリズム的なものって。

もともと私は洋楽中心に音楽を聴いていたので、洋楽と同じものってあまり興味がわかない。
それよりも日本独自のポップミュージックってものを聴いてみたい。そういう欲望があるんだと思う。

数年前に昭和歌謡ブームというのがあって、クレイジー・ケン・バンド、エゴ・ラッピン、小島麻由美あたりがもてはやされたりしたことがあったんだけど、好きだったし、これらの音楽。
だけど、エゴ・ラッピンってどんどん歌謡曲的な要素を消していってるような気がするんだが。

ところで、以前に上の論考をもとにして
「それがアニソン向きの曲かどうかが一発でわかる方法」
っていう記事を書こうと思ったことがある。
結局書かなかったけど。

この書かなかった記事の論旨ってのはすごく単純で、「歌詞の日本語が聞き取れればそれはアニソン向き、歌詞が聞き取りづらければそれはアニソン向きじゃない」ってことだった。

私は音楽的にドメスティックなほうがアニソン向きなんじゃないか、と思ってた。
あまりお洒落な音楽はアニソンに向かないんじゃないかと。

ところが日本語が聞き取りづらい音楽というのは、洋楽志向の可能性が高い。
洋楽に近づけようとして日本語を崩してる、だから日本語が聞き取りにくい。
そういう可能性が高い。
だからアニソン向きじゃない。

そして、それを逆から考えればアニソン向きの曲は日本語が聞き取りやすいものではないかと。
たとえば、水木一郎氏の歌を想起してもらえば話は早い。
歌詞がちゃんと聞き取れるでしょ。

そういう文章を書こうと思ってたんだけれど、結局書かなかった。
なぜかっていえば、これって昔のアニソン事情には当てはまるけど、今のアニソンにはぜんぜん当てはまってないから。

J-popが普通にアニソンに使われるようになって随分たつわけで、もはや、アニソン向きの曲かどうかなんていう基準はどこにもない。

たとえば私はナルトのOPがすごく好きなんだけど、このOPのnobodyknows+なんて思いっきり歌詞が聞き取りづらい。
自分が好きなアニメOPの曲が歌詞が聞き取りにくいんじゃさすがに意味ないだろって思って書かなかった。

アニソンとJ-popの垣根なんてものはもう存在してないような状態なんだと思う。

ところで、ここまで書いてみて気づいたんだけど、この「もってけ!セーラーふく」に対するオタクたちの盛り上がりというものが、アニソンとJ-popの垣根を必要以上に強調しているように見えるのは興味深い。

J-popは「もってけ!セーラーふく」に敗れたのか?
音楽ファンはアニオタと一緒にアニソンを歌え!

ここらへんのタイトルの付け方って、アニソンの内部とその外部であるJ-popにとても濃い線引きをしてるように思う。

そりゃ確かに、もってけ!セーラーふくは声優が歌っているわけで、ナルトOPとは違って明らかにアニソンだ。
だけど、ここまでアニソンと J-popがごっちゃになってる状況でそういう線引きって意味あるのかなって思ったりするんだが。
ごっちゃになってる状況だからこそ線引きしたがるのだろうか。
そこらへんはよくわからないけど。

えっと、また話がズレた。

ラップとして「もってけ!セーラーふく」を評価する

このスレのなかで、「もってけ!セーラーふくは日本語的なラップを作り出した」ということを書いている人がいることは、上記したとおり。
これは確かにとても素晴らしい文章なんだけど、一言だけ言いたい。

もってけ!セーラーふくってぜんぜん歌詞が聞き取れないんですけど!!!

英語的なラップじゃなく、日本語的なラップを作り出したことは確かにそうだと思うんだが、そもそもその日本語の歌詞が聞き取れないんじゃ、何のために日本語的なラップを作り出したんだかまったく意味不明。
英語的なラップより聞き取りづらいじゃないか、もってけ!セーラーふくの歌詞って。

歌詞が聞き取りやすければアニソン向きという、私の役に立たない判定法をあえて使ってみると、涼宮ハルヒの憂鬱の
「冒険でしょでしょ?」と「ハレ晴レユカイ」ってもろアニソン向きの曲。
歌詞が聞き取りやすいだけでなく、日本語の文節とかもほとんど崩していない。
だけど、「もってけ!セーラーふく」は歌詞が聞き取りにくいのでアニソン向きじゃない曲になってしまう。
だけど、この曲は『西洋音楽の基本であるコード・リズム・メロディの3要素を
全て「日本語の構造」で解決した』ものなのだという。

「もってけ!セーラーふく」ってわけがわからん。
この曲がどこを目指してるんだか理解できない。
はっきり言ってイカれてる。
だけど、そのイカれてるところが、とても面白い。

日本語でラップをやろうとしている人たちって、2pacだとかJay-Zだとかカニエ・ウエストとかに憧れてラップをやろうとしているんだろう。
いや、最近のヒップホップはよくわからないので、ここらへんはもう古臭かったりするのかもしれないけど。

そうやって本場のヒップホップに憧れてそれに近づこうとして努力してる人たちよりも、ただの声優アイドルが新しいラップを作り出してしまうってのは面白い。
Jay-Zもカニエも関係ないところから、ぽっと新しいものが生まれてしまうっていう。
これって笑えるし、なんか痛快だ。

たしかポール・マッカートニーは「音楽はらせん状にしか発展しない」(←うろおぼえ)というようなことを言っていた。
音楽というものは、一見すると同じところをぐるぐる回っているように見えるけど、それを横から見ればわずかながらも発展していっているのだ、と。
要するに音楽というのは過去の音楽を参照しながら徐々に上へ発展していくものだってことらしい。

だけど、もってけ!セーラーふくみたいに、突然変異みたいにして新しいものが生まれてしまうこともあるわけだなあ、としみじみ思う。
みんながらせん階段をてくてく歩いている横をロケット花火でスパパーっと上に行ってしまうっていう。
真面目にらせん階段を昇っている人からすれば「アレは所詮ロケット花火。おもちゃみたいなもん」と言いたくもなるのだろうけど、そんなことよりもどっちが上に行けたかということのほうが重大だ。
おっと、誤解されるといけないので付け加えておくと、どっちが上かっていうのはどっちが売れたかということではなくて、どっちが面白いかってことね。

もちろん、もってけ!セーラーふくの新しさっていうのはあくまでラップ部分だけの話で曲じたいはぜんぜん新しいものでないけれど、それでも新しいものが生まれてしまった、っていうのは確か。

これからこのロケット花火にフォロワーは出てくるのだろうか?
いや、それは出ないと思うけど。


TVアニメ「らき☆すた」OP主題歌 もってけ!セーラーふく
TVアニメ「らき☆すた」OP主題歌 もってけ!セーラーふく


Dusk&Dawn
Dusk&Dawn


記事の中で紹介したTOKYO No.1 SOUL SETのベスト盤。
実は、今回はもってけ!セーラーふくの話にからめて、このTOKYO No.1 SOUL SETを宣伝してみようっていう意図があったりして。
だけど、あまり宣伝になってないか、これじゃ。
そもそもこのブログの影響力なんて全然ないし。
はっきり言って影響力なんて皆無だし。

TOKYO No.1 SOUL SETって一部の好事家のあいだでだけ人気のあった人たちだから、多少なりとも知名度が上がればいいなって思ってるんですけど。
自分の影響力の無さがうらめしい。
jive my revolverとロマンティック伝説は名曲!!!
だと思うんだけどなあ。


タグ:音楽

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