
1 野菜は無農薬でなければいけない。
2 料理に化学調味料を使ってはいけない。
3 チェーン展開を始めた飲食店は味が落ちる。
4 あん肝はフォアグラよりうまい。
5 寿司を握るときにシャリを捨てる職人は二流。
6 アサヒスーパードライはスプーンを舌に押し当てて剥がしたときの味。
7 牡蛎とワインを一緒に食べると嫌な後味。
8 人生における大概の揉め事は料理で解決できる。
9 海原雄山はツンデレ。
今まで美味しんぼを読んでいて勉強になったことを箇条書きにしてみました。
1とか2あたりなら意味は分かるでしょうけど、美味しんぼを読んだことのない人には何のことだか理解できないものもいくつか含まれているので、以下でちょっと解説してみます。
5 寿司を握るときにシャリを捨てる職人は二流。
寿司職人が寿司を握るときに、シャリを手にとり、そのうちの余分なシャリを米櫃に戻したりすることがありますよね?
アレをする職人は二流なんだそうです。
なぜかというと、これは寿司を握るときにちょうど良いシャリの分量というものがわかっていないことを意味しているから。
一流の寿司職人なら、最初から適切な分量のシャリを手に取るので、シャリを捨てることはないそうです。
こんな知識を得たところで、一見どこにも使い道がなさそうに思います。
……うん。
使い道……、ないよ。
もし自分のなじみの寿司屋がシャリを捨ててたらブルーになるし。
シャリ捨てんな、お前、二流か?ああん?
……とか言えないし。言えるわけないし。
どっちかってぇと、こっちが弱い立場だし。金払ってるのに、弱いっておかしいけど、弱いし……。
……そうです。そうなのです!
美味しんぼで得られる知識というものは、大概、使い道がありません。
だけど、自分をどこか知らない場所に連れて行ってくれるのです。
その知らない場所に連れて行かれるのか幸せかどうか……。
それは、とりあえず、おいておきましょう。
とにかく、美味しんぼはどこかに連れていってくれる。
それが重要なのです。
4 あん肝はフォアグラよりうまい。
頭のなかに
あん肝>フォアグラ
という一般人ではありえない不等号がなりたっているのが、美味しんぼ読者。
のどに無理やり食べ物をつめこまれ、無理やりに太らされたもの(フォアグラ)と、自然のもの(アンキモ)。
不自然と自然。
どちらが美味しいかはわかりきっている……ッ!!
そう。
どちらが美味しいかはわかりきっています。
美味しんぼにおいて、『自然』は美味しいもののキーワード。
いや、『自然』という文字を見ただけで、ごはん三杯はおかわり余裕……っ!!!
なぜなら……っ!
……『自然』
それだけで、唾液がじゅるじゅると舌奧にわいてくる。
『自然』
ああ。ああ……。
ああ……。あ。
『自然』
その名のもとに……。
心優しい人々はきっと……・
『自然』
身体に優しい、有機農業を行っているはず……。
連想ゲームが、ここまで続かないと、
立派な美味しんぼ読者とは言えません。
私はかなり高級なフランス料理屋(なにしろ、ウーロン茶一杯(←たぶんサントリー)が800円でした、川越か、こ)で、フォアグラを初めて食したのですが、
あん肝>フォアグラということを重々承知していたので、
目の前の脂っぽい茶色の肉片に臆することも、
また、フォークが震える等の失態もこれなく、無事、会食を終えることができました。
思い込みの力というものは恐ろしい。
6 アサヒスーパードライはスプーンを舌に押し当てて剥がしたときの味。

アサヒ スーパードライ 350ml缶×24本 -

このエピソードが出てくるのは、美味しんぼの18巻。
ちなみに、このエピソードでは「スーパードライ」とかの商品名はさすがに出てこず、「ドライビール」という呼び名で統一されてます。
ひょんなことからドライビールの研究をすることになった、山岡と栗田さん。
やる気をだしている栗田さんに対し、
「俺はドライビールなんかに興味はありませんからね、栗田さん一人でしてもらってください」
と最初から、ドライビールに対する無気力っぷりを見せつける山岡。
ところが、そこへ通りかかった「自分はドライ党」だという局長に命令され、嫌々ながらドライビールの研究をすることに。
ドライビールの試飲会のために、とあるレストランに集まった山岡たち。
山岡、栗田さん以外のメンバーは板山社長、京極さん。
どうも、この試飲会のためだけにレストランを貸し切ったらしく、他の客の姿が見えません。
ビールなんてどこで飲んでも同じだろうに、無駄に贅沢な。
板山社長「私もドライ党なんだよ!」(満面の笑みで)
栗田さん「まあ、板山さんも?」
京極さん「銀座の有名な天プラ屋ではビールはドライしか置いとらん!まったく大変な人気じゃな」
冒頭でこんなやりとり。
とにかくスーパードライは大人気なのです。
猫も杓子もスーパードライが大好きなのです。
スーパードライにあらずんば、ビールにあらずなのです。
当然、山岡は例の渋面(←この愚民どもが……っ)を作っています。
その後、ビールに関するちょっとしたウンチク話が繰り広げられたあと、試飲開始。
山岡「ドライビールの前に、まず麦芽とホップだけで作った本格的なビールから(飲んでみましょう)」
ってことで、「本格的なビール」をみんなで飲んでます。
ちなみに、もうこの時点で山岡がドライビールを「本格的でないビール」と思っていることがわかります。
本格的なビールを飲んで、
板山社長「ふむ、コクがあるな」
京極さん「いい香りや」
栗田さん「ズキンと効くわね」
そして次にドライビールの試飲。
んぐ、んぐとドライビールを飲んだ後、3人は怪訝な表情。
板山社長「・・・・・・?」
京極さん「はて?」
栗田さん「味がうすい・・・・」
まあ、そんなことになるだろうとうすうす感づいてはいましたが、3人とも山岡の思惑通りのリアクションしてくれてます。
板山社長「私はドライ党のはずなんだよ、この味は気に入っていたはずなのに・・・・」
京極さん「おいおい、ドライちゅうんは味がないいうことなんか?」
初っぱなに自分はドライ党だと高らかに宣言した板山社長の豹変っぷりが気になりますが、この人はいつもこんな感じでその場の雰囲気にながされまくる人なので気にするだけ無駄です。
順調にフラグをこなした山岡はここで演説開始。
ドライビールには、本物のビールの旨味がないのだと力説したあと、
山岡「ドライビールを口に含んだ時に、舌の中央にまっすぐ強い刺激を感じます。しかし、旨味ではない、単なる刺激だ。飲み込むと、その刺激が弱まって後口へ変わっていくのだが、それがなんともはや、すっぱいような平坦な味だ。」
説明が長ェ。
これでも省略してるのに。
この説明のあと、山岡は
「スプーンを舌にべったり押しつけて離してみてください」
出た。
美味しんぼにおける、もっとも重要なシーン。
美味しんぼの狂気と喜劇性。
それが同在する、このシーン。
私だったら、こんなわけのわからない命令には従いませんが、この人たちはブルジョワのくせに山岡には変に素直なので、言われたとおり、スプーンを舌にべったり推しつけて離してます。
大の大人がスプーンを舌に押し当てている絵柄はかなりアホっぽい。
板山社長「ああ!同じ味がするっ!」
栗田さん「すっぱいような平坦な味だわ!」
・・・・ってことで、スーパードライは「スプーンを舌に押し当てて剥がしたときの味」らしいです。
この後、ドライビール、またドライビールの愛飲家に対する罵詈雑言がふんだんに盛り込まれています。
たかだか、スーパードライが口に合わないというだけの話なのに、こんな珍妙な方法で不味いことを証明してみせようとするところに、美味しんぼの狂気を見たような気がしました。
つーかさ、スーパードライがビール本来のこくがなくてダメ、ならホッピーはどうなるんだと。

ホッピー ブラック ワンウェイ瓶 330ml×24本 -
庶民の味方、ホッピー。
ホッピーというのは、焼酎の割材で、スーパードライよりも、はるかに味がない。
初めてホッピーの白を飲んだ人はこう言うと思う。
「これは味のないビールだ」と。
だけど、飲むうちに、この味のなさが段々好きになってくるのである。
何かをつまみに飲むときは、変に味が強い酒は邪魔だしね。
美味しんぼの作者は左翼。美味しんぼも庶民の味方を気取っている。
だけど、本当の意味で美味しんぼは庶民の味方じゃない。
むしろ、これは漱石の高等遊民にちかいんじゃないか。
そこのところが、ここらへんで示唆されるわけです。
9 海原雄山はツンデレ。
参考サイト
第1回 属性別選手権 ツンデレ級王者決定戦
「雄山=ツンデレ」は日本国民の常識になってるみたいです。
ところで、私は美味しんぼを子供の時分から愛読しているんですけど、前々から疑問に思ってたことが一つあります。
それが何かっていうと、コレ。
2 料理に化学調味料を使ってはいけない。
美味しんぼの中で、化学調味料が悪者扱いされているのは美味しんぼファンなら誰でも知ってる事実。
「仕上げに味の素の本だしを入れると、味が締まるんだ」なんて山岡が言うシーンは美味しんぼにはありません。
化学調味料を使った料理は美味しんぼのなかには出てきてないはずです。
もっとも悪い例としてなら出てきますが。
それはそれでいいんですけど、ここで一つ疑問が。
みそ汁とか吸い物、スープのたぐいは化学調味料なしでも美味しいものができるんだと思うわけです。
たとえば、テレビで道場六三郎が吸い物を作ってるところを見たことがあるんですけど、鰹節を大量に入れて作ってました。
これでもかってくらい。
こんなふうに、吸い物とかの場合、化学調味料なしでも旨味成分を多量に含んだ料理はできるんだろうと思います。
もっとも、私の料理の知識は美味しんぼ、ミスター味っ子、焼きたて!!ジャぱんに依拠してるものなので、あまりちゃんとしたことは言えないんですけど。
しかし、世の中には化学調味料なしには成り立たない料理が一つあるんじゃないかと。
炒飯(チャーハン)。
炒飯って化学調味料なしでは成り立たなくないですか?
化学調味料を使わないで作ると、それはただの焼き飯であって、決して炒飯の味にはならないと思うんですけど。
化学調味料を使わずに美味しい炒飯を作る方法ってあるんですかね?
これがずっと疑問でした。
そういえば、美味しんぼには今まで炒飯が登場してないような気がする(もし出てたら失敬)。
[追記]
はてブで「美味しんぼに炒飯出てくるよ」っていう指摘受けたんで読み返してみたら、たしかに4巻で出てきてました。
炒飯を作るときは鍋を大きく振って、空中に米粒を舞い上がらせないと、パラパラ炒飯は作れない、みたいなエピソードで。
失礼しました。
すっかり忘れてた。
これを読んでからというもの、炒飯を作るときにフライパンを派手に振り上げるくせがついて、料理後はコンロ周りに米粒が散乱という目も当てられない惨状に陥ってたのに。
しかし、ここでも化学調味料は使われてなかったです。
当たり前ながら。
それから、鰹の塩辛の炒飯が何度か出てるらしいんです。
それはうまいかもしれないけど、やっぱり正当な炒飯ではないですよねえ。