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2007年11月27日

ケロロ軍曹こそが純愛の物語である!

「純愛」という言葉の意味がわからない。

この言葉はもともと、セックスを排した恋愛、つまりプラトニックな恋愛のことを指していたように思う。
どんなに愛し合っていても肉体の純潔は守る、みたいな。

戦前には、純潔を守るために、入水自殺をした学生カップルがいたらしいけれども、こういうものをもともとは純愛と呼んでいたのだろう。

こういう意味合いであれば、たしかに純愛という言葉の意味はわかる。
肉体関係のない恋愛を純粋な愛と呼んでいいものかどうかには疑問は残るけれども、とりあえず、ここで「純愛」という言葉が何を指しているかは明白だ。

しかし、こういう純愛に異を唱えているつもりなのかどうかは知らんが、まったく別の意味あいで純愛という言葉を使う人もいたりする。

『愛の流刑地』渡辺淳一のインタビュー

大島 小説の中に、いい言葉が出てきますね。例えば「恋愛体質」や「不倫純愛」などです。
渡辺 恋愛とかセックスは一種の癖でもあるから。しないでいると億劫になって、しなくてもすむ。やっぱり体質というのはあると思います。それに本気の不倫には打算がないでしょう。そういう意味では「不倫純愛」という言葉も必要だった。

渡辺淳一によれば本気の不倫には打算がないから純愛らしい。

ここでは肉体の関係のあるなしは問題とされていない。
この『愛の流刑地』っていう小説は日経で連載されてたときに、断片的に読んだだけなのだけれど、小説のなかで主役の二人はヤリまくってたし。
(蛇足だけど、この小説、クソ詰まんなかった)

渡辺淳一によれば、純愛とそうでない恋愛をわけるのは、ひとえに男女の心の持ちようである。
好きだとか、抱きたい(抱かれたい)とかの欲望に素直になるのが純愛。
金とか地位とかの恋愛以外の要素で惹かれるのは、打算が入ってるから純愛じゃない、ってことらしい。

この純愛の定義は最初のそれとまったく違う。
最初のが性交しているかどうかという物理的なところで判断しているのに対して、これは主観的な感情が純粋かどうかで分類してるわけだから。

うーん、何なんだよ、純愛って。
途方に暮れる。

また腐女子界隈では「男同士の恋愛は通常の男女間の恋愛よりも障害が多いから純愛だ」みたいな言い方が昔からある。

私は腐女子でもないし、また同性愛の経験もないので、その意見が妥当かどうかわからない。
しかし、この純愛の使いかたも、また二番目の渡辺淳一と同じく、肉体関係のあるなしで判断してるわけではないようだ。
やおい本のなかでは、カマ掘ったり、掘られたりするわけだけど、それでも純愛らしいから。

同性愛を普通の男女間の恋愛よりも高次のものとみなした文化というと、やはり古代ギリシャが思い浮かぶ。
もっとも、ギリシャでは年上の者が年下の者を導くという、教育的な少年愛が一般的で、普通の同性愛ではなかったらしい。
これは日本の戦国時代の衆道も同様で少年愛が主だったようだ。

それはともかく、古代ギリシャでは男女間の恋愛は生殖を目的としているから、不純であり、少年愛こそが純愛である、という考え方があったみたい。

こうして大雑把に見てみると「純愛」という言葉には3つの定義があるようだ。

<1>肉体関係がない恋愛

<2>打算がない恋愛

<3>生殖を目的としていない恋愛(セックスしても子供ができない恋愛)

しかし、まあ、みんな純愛って言葉を好き勝手に使っちゃってるよなあ。
なんか定義がバラバラだ。

なぜ、みんな純愛という言葉を使いたがるのだろう?
そんなにいい言葉なんだろうか、これ。
私はまったく魅力を感じないんだが。

しかし、ここまで定義がバラバラだといわゆる「純愛もの」と呼ばれるもののほとんどは、この3つの定義のどれかに合致しないはずだ。

たとえば渡辺淳一の小説。
(これはそもそも純愛とは呼ばれていないとは思うけど)
これはセックスしまくっているので、<1>肉体関係がない恋愛に引っかかる。
また男女間の恋愛であるため、<3>生殖を目的としていない恋愛にも引っかかる。
つまり純愛ではない可能性がある。

たとえば、純愛系のエロゲー。
これまた、<1>と<3>に引っかかる。
特にエロゲーの場合は、中出しするパターンが多いし。
中出ししてもなぜか妊娠しないけど。

冬ソナ。
これは<1>と<2>に合致してはいる。
しかし、<3>の定義から外れている。
よって、これも純愛とみなすことができない可能性がある。

こうしてみると、世間で「純愛もの」とされている作品でもたいてい、3つの定義のどれかに抵触していることがわかる。
まあ、それゆえに純愛とは呼べない、というわけではないけれども、三者のうちのどこからか文句がつく可能性はある。
「そんなの純愛じゃねぇ」って。
いくら、中年女性のハンカチを涙で濡らしたとしても、世界の中心で愛を叫んでみても、ダメなものはダメなのだ。

それではこれら3つの定義を満たす純愛ものはないだろうか?
誰もが、これぞ純愛と認めるような、掛け値なしの純愛。
そういうものはないのか?

ある!

童貞処女のまま身投げした学生、渡辺淳一、腐女子、これら3者の考える純愛に合致する物語が一つある。

それがケロロ軍曹。


ケロロ軍曹 1


ケロロ軍曹に出てくる恋愛は、そのほとんどが片思いだ。
そこで、以下に主要キャラクターの恋愛ベクトルを示してみた。


momoka01.jpg  fuyuki01.jpg
桃華 → 冬樹


giroro01.jpg  natsumi01.jpg
ギロロ → 夏美


koyuki01.jpg  natsumi01.jpg
小雪 → 夏美


moa01.jpg  keroro01.jpg
モア → ケロロ


tamama01.jpg  keroro01.jpg
タママ → ケロロ


他にも、夏美→623(サブロー)なんてのもあるが、623はあまり出てこないので、ここでは割愛した。

さて、この5つの片思いのなかで、普通の意味での男女の恋愛は一つだけである。

momoka01.jpg  fuyuki01.jpg
桃華→冬樹。
これだけが普通の男女間の恋愛であって、それ以外の4つは「普通」からは外れた恋愛になってる。

koyuki01.jpg  natsumi01.jpg

tamama01.jpg  keroro01.jpg
小雪→夏美、タママ→ケロロ。

この二つは同性愛である。
小雪→夏美が同性愛というのは、アニメだけ見ているとわかりにくいかもしれない。
けれども、漫画のなかでは小雪の夏美に対する気持ちというのは同性愛以外の何物でもないように見える。
一緒に風呂に入りたがったり、やたらと夏美を脱がせたがったりと。

次に、

giroro01.jpg  natsumi01.jpg

moa01.jpg  keroro01.jpg

ギロロ→夏美、モア→ケロロ。
これは異性間の恋愛感情ではあるけれども、その前に生物の種が異なっている。
ケロン人→地球人、アンゴル族→ケロン人。
これまた普通の恋愛とは呼べないだろう。

今、気づいたんだけれども、夏美とケロロに対する二つの片思いって、ちょうど対になってるんだな、これ。

小雪→夏美(同性愛) ギロロ→夏美(異種間の愛)

タママ→ケロロ(同性愛) モア→ケロロ(異種間の愛)

主要キャラの二人に、同性愛と異種間の愛の二つが寄せられている格好になってる。
なるほど(何がなるほどなんだか知らんが)。

ところで、上で私は3つの純愛の定義を紹介した。

<1>肉体関係がない恋愛

<2>打算がない恋愛

<3>生殖を目的としていない恋愛(セックスしても子供ができない恋愛)

ほとんどの純愛ものがこの3つの定義全てを満たすことができなかったが、ケロロ軍曹であればちゃんと合致しているのである。(桃華→冬樹以外)

<1>肉体関係がない恋愛
さすがにケロロ軍曹のなかでセックスが描かれることはない。
漫画だとお色気シーンがあったりはするけど。

<2>打算がない恋愛
モアがケロロに恋をすることが、いかなる功利を彼女にもたらすのか見当もつかない。
ギロロが夏美に恋をしているのは彼の立場からすれば、明らかにマイナスだ。
よって、ここに打算はない。
タママだけにはひょっとしたら打算があるかもしれないけど。

<3>生殖を目的としていない恋愛(セックスしても子供ができない恋愛)
小雪とタママは同性愛なので、生殖を目的とはしていない。
ギロロ。そもそもギロロが夏美と性交することが可能であるのか、よくわからないのであるが、とりあえず性交をしたところで子供は生まれないと思う。
カエルはそもそも交尾をしない。
外に産みだされた卵に精子をかけることで生殖するわけだし。
モア。同じく妊娠はしないだろうと思う。

このようにケロロ軍曹に出てくる恋愛のうち、5分の4が純愛の要件を完全に満たしている。
もっとも、これは主要キャラだけで検証してみた結果であって、たぶん脇役を入れると、この割合はぐんと下がるとは思うが。

主要キャラにこのような「普通じゃない片思い」が多いのは、片思いというものを永続的に固着させる目的があるんだろうなあ。
たとえば、ギロロは夏美に片思いしてるという属性がキャラの一部になっちゃってるから。
ギロロ→夏美は異種間の愛なので、片思いが永続的に固着する。
いくら夏美のギロロに対する信頼感が増したとしても恋愛までは至らないだろうし。

逆に、脇役には普通の恋愛感情(異性愛、同種間の愛)が多いように思うけど、これは脇役が一時的にしか出てこないので、恋愛感情を分かりやすくするためにそうしてるように思う。
夏美と623は最もカップリングが成立しやすい組み合わせだと思うけど、623って脇役でしかない。
623はクルルのパートナーなのに。
これは623の出番が多いと、夏美との関係が深まってしまう可能性があるため、脇役になっちゃったんじゃないかと思ったりする。

とりあえず、それぞれ相反した純愛の3つの定義に、ここまで合致している以上、ケロロ軍曹を純愛の物語と呼ぶになんのためらいがあろう。
ケロロ軍曹こそが純愛の物語だと私はここで断言したい。

あ、ついでにカミングアウトしておくと、夏美は自分の最萌えキャラ。
たぶん、日向夏美に萌えてる男子は全国に50万人ぐらいはいると思うな。
何の根拠もないけど。

ケロロ軍曹 15 (15) (角川コミックス・エース 21-25)


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