2008年09月24日

DREAM.6の感想 ロシアンフックは本当に総合で有効なのか?

すっかりテレビ放映があるのを忘れてて、10時くらいから見始めた。


セルゲイ・ハリトーノフvs ジミー・アンブリッツ


この試合、ハリトーノフの相手はもともとモーだったらしいんだけど、モーが負傷欠場したために、急遽、ジミー・アンブリッツに決まった、らしい。


このジミー・アンブリッツってのが、筋肉モリモリ。
よく、ボクシングやキックボクシングで「胸に筋肉をつけすぎると、ストレート系のパンチが出なくなる」っていうけど、まさにソレだった。


ジミー・アンブリッツのパンチは常に腕が曲がっていて、フック系のパンチしか出せない。いや、あれはフックですらないと言ったほうがいいのかもしれん。
とにかく、まともなパンチが出せないのだ。


試合自体は、ハリトーノフがスタンドでパンチを浴びせて、余裕勝ちだった。


ところで、昔、佐山聡が「総合でもっとも有効なパンチはロシアンフックだ」と主張していたことがあった。


総合ではたえず相手がタックルに来ることを想定しなきゃいけない。そうすると、ボクシングやキックボクシングのような腰が入ったパンチ(もちろんキックも)出せない。腰をひねると、それだけ体のバランスが悪くなり、タックルで倒されやすくなるから。
そうすると、相手に向かって体をひねらず、腕だけを振り回すような形で出すロシアンフックがもっとも有効なパンチということになる。佐山の論理はこのようなもの。


ヴァンダレイ・シウバなどのシュートボクセ勢、また、数年にわたってずっと総合格闘技の選手で最強であるヒョードルもフック系のパンチを多用してる。
今日の試合だと、アリスターなんかも、手が非常に長く、ストレート向きだと思われるにもかかわらず、フック系のパンチばかり撃っている。


だが一方、ストレート系のパンチを使う選手もいる。
ノゲイラなんかはボクシングを習っていただけあって、ストレート系のパンチを使ってた。
今日の試合に出てた選手だと、ミルコ、秋山なんかがそう。


佐山の話を読んだときは、なるほど、そういうもんかといたく感心したわけだが、これだけストレート系のパンチを使う選手が増え、また、活躍できているのを見ると、さて、これはどれだけ妥当なもんかと疑問に思わないでもない。


特にミルコだが、彼はストレート系のパンチを使うだけでなく、キックまで使っている。そして、実績を残した(もっともUFCではノゲイラ、シウバとは対照的に無残な結果に終わったが)。
言うまでもなく、ストレートよりも、キックのほうが体のバランスを崩すわけで、佐山の説からすれば、キックは使ってはいけないはずだ。
特にミルコは純粋に打撃出身の選手なので、それがあてはまる。


もっとも、これはちゃんと理由がある。
現在の総合格闘技のルールに膠着ブレイクが取り入れられたからだ。
寝技で動きがないとき(膠着してると思われたとき)などに、スタンドから試合を再開するが、昔はそんなのはなかった。ただ、ガードポジションからコツコツパンチをわき腹に入れているだけであっても、ずっと、そのままだった。
初期のプライドなんかでは試合中に「つまんねーぞー」と野次がとんでいたくらい。


佐山がロシアンフック最適説を唱えたときは、たしか、膠着ブレイクが取り入れられていたような記憶があるが、なにせ、歴史が浅いので、そこらへんの見通しはあいまいだったのかもしれない。


今の総合格闘技が膠着ブレイクを取り入れてなかったとしたら、打撃系の選手がこれだけ活躍することもなかっただろう。
膠着ブレイクの導入というのは、総合格闘技における最大のパラダイムシフトだった、と私は思っている。


ただ、そういうルール面での意味合いはさておいて、ストレート系のパンチが総合格闘技で有効なのかどうかってのは、正直なところいまいちわからないんである。
二回目のミルコ対シウバ戦では、ミルコのストレートが面白いように決まり、その蓄積もあってか、シウバはミルコのハイキックでKOされてしまったんだけど、この試合なんかを見ると、ストレートはやっぱり有効なんじゃないかっていう気もしちゃうわけだし。当たり前のことだけど、ストレートのほうがリーチが長い。
まあ、最初の試合では引き分けではあったけど、明らかにシウバが押してたけど。


さて、みんな大嫌いの秋山さんだが、途中から試合を見た。もうグラウンドに入ってた。
秋山は柔道出身らしく、押さえ込みには強いが、極めには弱いという印象を持ってたんだけど、まあ、そのとおりの展開だった。


ただ、完璧な選手ではないとはいっても、秋山が強いのは事実。
特に打撃のセンスはすばらしいとしか言いようがない。癖の無いパンチ(ストレート)撃つし、あて感もいい。


正直なところ、いちばんヒョードルと闘ってほしい選手だ。体重が違うのは百も承知だが、それでも闘ってほしい。
だって、ボコられるところを見たいんだもん。

2007年10月12日

ボクシングの階級名は変すぎる!

内藤タイトル初防衛、大毅に圧勝

試合は後半しか見てなかったんだけど、どうして亀田はああいう距離をつぶす戦い方しかできないのだろう?
長男のほうの最初の世界戦のときも同じことを感じた。

別に距離をつぶして戦うのなら、それでもいいけど、そこからのコンビネーションが全然ないし、ダッキングとかもそう使うわけではないし。

極端に言えば、K1のボブ・サップのファイトスタイルみたい。
距離をつぶして、後はパワー勝負っていう。

K1の中量級にアンディ・サワーという、とても優れたキックボクサーがいるけれども、彼のほうがパンチのコンビネーションが多彩ってのはどうなんだろう?

キックボクサーのパンチのほうが、ボクサーのそれよりも見応えあるってのはどうも間違ってるような気がしてならない。

まあ、実は亀田については特に語りたいことがあるわけではなく、ついでなんで前々からボクシングについて疑問に思っていることを書いておこうかと。
それはボクシングの階級名ってどうも変すぎやしないかと。

重いクラスの「ヘビー級」「ライトヘビー級」。
ここらへんは特にどうってことはない。
ただ、「重い」「ちょっと重い」っていうだけのシンプルな命名だから。

ミドル級、ウエルター級、ライト級あたりもまあ普通。

変になってくるのは、57.153kg以下の「フェザー級」から。
フェザー、つまりは羽毛なわけだけど、これって戦う男が争う階級名にしては、妙じゃないだろうか?
名前が軽すぎるよ、どうも。

次の53.524kg以下の階級を表わす「バンタム級」。

この階級には思い入れがある人がたくさんいるだろうと思う。
なにしろ、これは「あしたのジョー」の矢吹丈が生涯こだわりつづけた階級だから。

韓国人ボクサーの金竜飛との試合の前に、自分の体が成長してしまったことに気づいた丈は過酷な減量をする。
終いにはサウナに入って下剤まで飲む、という壮絶な減量に涙した読者も多かったであろう。
って、それは私だ!!!

いや、もうね、あまりの壮絶さに言葉もなかったよ。
あのシーン。

この対戦相手の金竜飛というのは、
「血を見ると発狂してしまう」
という、よくよく考えるとボクシングという競技にまったく不向きな男だったので、丈は無事勝利を収めたわけだけど、丈が下剤まで飲んでこだわりぬいた階級。
それがバンタム級。

で、私は今までバンタムの意味を知らなかったので、ちょっと調べてみると、これ「チャボ」っていう意味らしい。
「チャボ」って言われても、ピンとこない人もいると思うので説明しておくと、ニワトリの「チャボ」。
あの「チャボ」。

あれ?

フェザー(羽毛)級よりも軽い階級であるはずのバンタム級がチャボ?

そのチャボについてるじゃないか、羽毛が!!!

また、あしたのジョーの話になるけど、力石徹はもともとフェザー級の選手である。
それが丈と戦いたいがために、バンタム級まで落してきたのは皆さん、ご承知のとおり。
つまり、日本語にすると「羽毛級」から「チャボ(ニワトリ)級」に階級を落したのである。

変!!!
すっごく変。

どう考えたって、羽毛よりもニワトリのほうが重いじゃねぇか。
何?この重力無視。

さて、バンタム級の下のフライ級。
つまり、今回の内藤、亀田が争った階級である。

フライ。つまり「蠅」。

ここまで来ると、もうフライ級のボクサーを貶めようとしているとしか思えない。

今回の内藤・亀田戦は、これから色々とたたかれたりもするのだろうけど、とりあえず二人とも試合に勝ちたくて必死だったのは言うまでもない。
亀田がレスリングしかけるくらい自暴自棄になったのだって、そもそもは勝ちたくて仕方がなかったからである。
そこの部分を疑う人はいないだろうと思う。

そこまでして二人の男を必死にさせた、階級名が「蠅級」ってのはどうだろう?
どうだろう、っていうか、もうこれは悪意以外の何物でもないと思うよ。
「蠅級世界チャンピオン」って呼ばれて嬉しいのか?
もちろん、ボクサー本人が嬉しいのは当たり前だけど、名前のつけ方がおかしすぎるじゃないか、それ。

いちばん、軽いクラスのストロー級にいたってはもはやなんとも。
なにせ「藁」だから。

藁って、あんた・・・・。

旅先で、寝床にこまって、牧場主に馬小屋で寝せてもらう。
そこに敷かれてあるのが「藁」。

そんなものを階級名にする必要がどこにあるんだろう?


タグ:ボクシング

2007年04月23日

ミルコ負けちゃった・・・。

ミルコ2度目の屈辱…まさかKO負け
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070423-00000012-spn-spo


ミルコ負けちゃいましたね。


試合見たんですけど、なんで負けたんだかさっぱりわからん。
相手は柔術の選手らしい。
試合の序盤に、その相手の選手がワンツーを何回か出すんですけど、それがぜんぜん大したことのないパンチ。


「あー、ぜんぜん打撃できないんだ、この人」
とか思ってたら、1ラウンド終わりかけに、相手の右ハイキックが決まって、ミルコがKO。


こんなグラップラー相手に打撃でKOされるとは思わんかった。
どうしちゃったの?ミルコ。


思えばミルコが総合の試合で判定以外で負けたのって、
1ノゲイラに腕ひしぎで一本負け
2ランデルマンに右パンチでKO
3今回の右ハイキックでKO


スタンドでの打撃でのKOのほうが多いんですけど・・・・。
しかも、そのKO負け喰らった相手ってのが二人ともグラップラーじゃないですか。


もともと、打撃のスペシャリストだけに、
「グラップラー相手に打撃では負けるわけがない」
という思い込みがあるのかもしれない。


ミルコってヒョードル、ノゲイラと比べると、
精神的に弱いというかあやういところがあるからなあ。
ヒョードル、ノゲイラはどんな窮地に追い込まれても、平静な顔を保ってるけど、ミルコって一端ピンチになると、まるで暗闇のなかの小動物みたいにおびえた顔するし。


まあ、そういう危うさが魅力でもあるわけですが。

2007年03月31日

プライドとUFCの合体

PRIDEとUFCが史上最大の合体
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070328-00000007-dal-fight

重大発表公開記者会見/3・27PRIDE六本木ヒルズアリーナ速報まとめ

http://kakutolog.cocolog-nifty.com/kakuto/2007/03/327pride_2a39.html



プライドがUFCに身売りかぁ。
ほぉ。


例のヤクザがらみの事件が発覚してフジテレビが撤退したころから、こうなるだろうことは予想してはいたけれども、やっぱ切ないものがあるなあ。
なんせ数年前はUFCが低迷してて、プライドは絶好調だったし。
あのころは世界最高の総合格闘技イベントといえば、間違いなくプライドだったんだけど。
あの時は、「プライドがUFCを飲み込む」ことは想像できても、その逆は想像できなかった。
今のアメリカでは、UFCの人気がすごいらしいですしねえ。
うーん、変われば変わるもんだな。


プライドのファンって、日本人選手を必要以上にケナすわりに、「プライドは世界一だ」と信じているような、妙にアンビバレントなナショナリズムを持っているんだけれど、彼らはどう反応してるんだろう?
最近、格闘技熱が下がってしまっている状態で、ネットで格闘技関連の情報収集とかもぜんぜんしてないのでよくわからないんだけど。


プライドがアメリカ資本に飲み込まれたのは残念ではあるけれども、格闘技観戦としてはこれからかなり面白いことになるでしょう。
なにせ、プライドとUFCと言ったら、総合格闘技の二大ブランドだし。
その二つの間で交流戦が行われるとなれば、これは見逃せない。
ここ一年くらい、格闘技に対する情熱がクールダウンしてた状態だったんで、また見始めてみようかな?


ついでなので、UFCとプライドの話をちょっとだけします。
これは格闘技ファンには今さらこんなこと、、、、ってな話ではありますが。


UFCとプライドって、選手の格闘技術には多少の特色がある。
大雑把に言うと、
UFCが、レスリングとボクシングを組み合わせた選手が多く、
プライドには、柔術とキックボクシングの組み合わせが多い。


UFCはアメリカの格闘技イベントなんで、当然、アメリカ人選手が多い。
で、もともとレスリングをやってた選手が打撃技術(ボクシング)を習ってUFCに出てくるっていうパターンになる。
アメリカにおけるレスリングって、ちょうど日本における柔道みたいなもんですかね。
アメリカでは、レスリングとボクシングの存在感は大きいですから。


日本では、もともとリングスやK1の招聘ルートがあったので、それを利用する(横取りともいうけど)形でプライドは発展してきた。
ブラジル、オランダ、ロシアあたりの選手がそうした形で、プライドのリングにあがっている。
K1経由でキックボクサー(ミルコ、マーク・ハント)、
リングス経由で柔術家(ノゲイラ、アローナ)って感じですかね。
あとは同じくリングス経由で、サンボ(ヒョードル)ってのもあるけど。


で、こういう背景があると、プライドのほうでは関節技による一本勝ちがでやすく、UFCのほうではパウンドによるKO勝ちが出やすくなる。
まあ、ちゃんと調べてないんで、違うかもしれませんけど、印象としてはこうです。


日本人のファンはパウンドよりも関節技を好むという、嗜好性もあるとは思いますが。


とは言っても、結局のところ、プライドとUFCというのは対立する技術思想を持っている、というわけではないんで、この両団体の交流戦というのは、「看板をかけた戦い」ではない。
交流戦の初期段階では「看板をかけて戦っている」感が、多少はするかもしれませんが、それも徐々に薄れて、混交していくと思います。
技術的な面ではどうなるのかっていうと、これはちょっと予想が難しいなあ。
打撃優位の時代がまだまだ続くのかな?


と思ってたら、東スポにロレンゾ(UFCを主催してるズッファ社のオーナー)のインタビューが載ってた。
それによると、


「PRIDEのルールはラスベガスでやったルール(4点ポジションでの頭部蹴りなし、1ラウンドすべて五分)になるでしょう」


とのこと。
このルール変更はどちらかというと、打撃系に不利かな?
1ラウンド5分というのは、打撃系に有利ですが(テイクダウンしてから関節技を極めるまでには多少の時間が必要)、4点ポジションでの頭部蹴りなし、というのは、シウバ等のシュートボクセ勢にとっては、かなり不利に働くし。
総合格闘技が発展するにつれて、徐々に少なくなっていった「関節技での一本勝ち」ですが、もしこのようにルール改正されたら、関節技優位の方向に多少なりともゆり戻しがあるかもしれない。
それからフリースタイル出身のレスラーも少しだけ有利になる。


知らない人のために説明すると、レスリングにはフリースタイルとグレコ・ローマンっていう二種類がありまして、グレコ・ローマンってのは足に触れてはいけない、というルール。
フリースタイルは、足に触れてもいい、というルール。
だから、グレコ・ローマンの選手はタックルするときは、相手の胴体に組み付くようにタックルする(相撲のさしあいみたいな感じで)んだけれども、フリースタイル出身の選手は、相手の足にタックルするわけです。
で、4点ポジションでの頭部蹴りありのルールだと、足にタックルしたときに、相手にがぶられた(覆いかぶせられる)場合いちばん危険な状態になる。
がぶられた状態でヒザ蹴りをくらってしまうから。
有名なフリースタイル出身のレスラーというと、桜庭とかKIDとかがそう。


プライドの初期は4点ポジションでの頭部蹴りなしのルールだったんで、フリースタイル出身のレスラーがかなり活躍してた。
マーク・ケアー(当時は最強と呼ばれてた)、藤田(ヘビー級の日本人で最も成果を出した選手)、マーク・コールマン(初代プライド王者、今じゃ誰も思い返さないけど)などなど。
あ、それにもちろん桜庭も。
ところが、プライド13で4点ポジションでの頭部蹴りありにルールが変更されると、その勢力図が一変。
足タックルという、それまでとても有効だったテイクダウン技術が、「もし失敗してがぶられるとそのまま膝蹴りを喰らう」という、かなり危うい技術になってしまった。
それを象徴するのが、このプライド13で初めて負けた桜庭(相手はシウバ)でした。
この試合で、桜庭は4点ポジションからの膝蹴り、サッカーボールキック等によって、惨敗。
以降、勝ち星に恵まれなくなる。


ちょっとしたルールの変更で、有効な技術体系というものが変わってしまう、ってことを実感しました。


ちなみに、私が総合格闘技に面白さを感じていた理由というのは、こういうところです。
可変性と言ったらいいのか、進化していく過程といったらいいのか。


歴史が浅い格闘技であるだけに、総合格闘技というのは常に変化し続けていた。


たとえば最初は打撃技術なんて、総合格闘技では無意味だと思われてました。
重要なのは、タックルによるテイクダウン技術(主にレスリング技術)と、寝技におけるポジショニングと関節技の技術(柔術)だけ。
みんな、そう思っていたし、私もそう思っていた。


佐山という日本の格闘技の歴史を語るうえでは欠かせない人がいるんですけど、彼がかなり早い段階で、

「これからの総合格闘技では打撃の時代がくる」

と言っていたときには、その意味が理解できなかった。
その時の私は、総合格闘技は「グラップラー(組み技系の格闘家)」のもので、打撃系の選手なんて総合で大成できるわけがない、と思ってた。
本当に強いのは寝技の出来るやつで、ボクサーやキックボクサーなんて、所詮は限定されたルールのなかでだけ、「強さ」を発揮できるにすぎない。
そう思ってた。


それが、まさか佐山の予言どおりに打撃優位の時代がくるなんて思ってなかった。


シウバの活躍もそれなりに既成概念を揺さぶられましたが、やっぱりショッキングだったのはミルコ。
純粋な打撃系選手が総合であそこまで通用するとは思ってなかった。


やっぱり天才(佐山)と凡人(私)では見えてる風景が違うんだなあ、と実感させられました。


まあ、こんなふうに総合格闘技というのは、常に変化しつづけ、また進化しつづけてきたわけで、そこが私が魅力を感じてきた理由です。
ボクシングのような歴史のある格闘技では、こういう「競技自体の変化(進化)」っていう現象はほとんど見られないですから。


ただ、ボクシングには「競技としての進化」がないかわりに、「昔の試合でも内容が充実している」という良さがある。
たとえば、80年代の中量級って、レナード、ハーンズ、ハグラー、デュランと、すごいボクサーがそろっていて、「黄金の中量級」なんて呼ばれていたんだけれども、彼らの試合を見ると今でも十分面白い。
というか、今のボクシングよりも面白く感じるくらい。
一方、プライドのいちばん最初の大会って、1997年なんだけど、これは今じゃとても見られたもんじゃない。
あまりのレベルの低さに唖然とする。
進化する、ということは、直近の過去を陳腐化していく、ということでもあるので、こういうことになる。


総合格闘技を見る面白さとボクシング等の歴史のある格闘技を見る面白さというのは、面白さを感じるポイントがちょっとずれてるんです、私の場合。
逆に言うと、最近、私が総合に興味を失くしてたのは、総合の進化ってのが止まったように見えたからなんですけど。
言い換えれば、総合格闘技というものが、ボクシング化している、っていうことかもしれない。


UFCとプライドの交流戦で、私の総合熱も蘇るのでしょうか?
個人的な希望でいえば、関節で一本とるタイプの試合が増えてくれるといいかな?
たとえば、この青木真也みたいな。




しかし、上手いなあ。
フットチョークなんて初めて見たよ。
タグ:PRIDE 格闘技 UFC

2007年01月11日

ぬるぬるの果てにあるもの(ってなんだ、このタイトル?)

本当は別の記事アップしようかと思ってたんですけど、これがあったので・・・。

秋山は反則行為で失格、秋山vs桜庭はノーコンテストに=Dynamite!!
http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20070111&a=20070111-00000014-spnavi-fight

しかし、スキンクリームなら大丈夫だと思っていたってのは苦しい言い訳ですね。
本当にスキンクリームだったのかどうかも怪しいもんだと思いますが。

それから、これノーコンテストになってますが、秋山の反則負けじゃないんですか?
なんでノーコンテストなんだろ?

しかし、秋山って柔道時代もぬるぬる問題起こしてるのに、なんでまた同じことをするんでしょう?
普通の感性だったら、一度そういう不正をして問題になったら、二度と同じことをしようとは思わないもんでしょ?
なにしろ一度ならまだしも、二度も不正をしたということなら、世間が許すはずもありません。
特に、今の秋山はプロの格闘家なわけで、ファンの人気というものを無視することなんてできないはず。
それなのに、平気でこういうことをできる秋山は本当に不思議です。

裏で卑怯な手を平然と使う一方で、試合前にセコンドたちと一緒に、正座して一礼するクサいパフォーマンスしたり、試合後のマイクパフォーマンスで、清原相手に泣かせるようなことを言ったり。
どうも、ちぐはぐな感じがするというか、私は秋山という人間がよく理解できません。
秋山本人の意識のなかでは、これらの相反する行動がどう折り合いつけられてるんでしょーかね?
ただ単に、秋山が偽善者だから、という理由も考えられるのですが、私は違うと思うのです。
裏では平気で汚いことをやっていながら、社会的な利便を考えて表面を綺麗にしておくというタイプの「悪人」だとは思いません。
というか、そういう悪人でいられるほど、秋山って頭が良さそうには思えないのです。

なんというか、秋山って、非常に自己愛が強い感じがしますよね?
たとえば、秋山は「柔道を愛してる」的な発言をしたり、パフォーマンスをしたりしますが、それは吉田の「柔道ラブ」とは微妙に違っているように思えます。
今まで自分がやってきた格闘技に、誇りを感じたり、愛着を感じたりというのは人間として当たり前のことであって、吉田の「柔道ラブ」もそうした自然な感情の表れでしょう。
ですが、秋山の場合はそれがちょっと違うものに感じられてしまう。
秋山は柔道そのものを愛してるというより、柔道をやってきた「自分」が好き、というふうに感じられてしまうのです。
もし柔道そのものを愛していたんだったら、道着をぬるぬるさせるなんていう行為は絶対しないでしょう。
それは柔道を汚す行為だから。

筋トレにこだわって、ムキムキボディを誇示してみたり、クサいパフォーマンスをしてみたりと、秋山がナルシストであることは明白なように思えるのですが、ならどうして汚い手を使うのかということは、正直よく分からないのです。
汚い手を使うということと、自分が大好きという意識は衝突しないんでしょうか?
卑怯者と世間から罵られるのは、ナルシストにとってすごく嫌なものだと思うんですが。

ひょっとしたら、秋山の意識のなかでは、自己愛が肥大してしまっていて、自分と他者との区別がついていない状態なのかもしれません。
「自分のやることは周りから許してもらえる」という根拠のない思い込みが秋山のなかにあって、それで多少の卑怯なら平然としてしまえるのかも。
もし、そうだとしたら、秋山というのは非常に興味深い人物です。
普通、こうした幼児的な考えは成長していく過程でいろいろな壁にぶつかって、消え去ってしまうものです。
この「甘え」がいまだに保全されたまま、大人になるってのはかなり珍しい。


前にも書いたように私は秋山が嫌いなんですが、こうやって考えてみるとちょっと面白く思えてきました。
少なくとも、これからウォッチングしていく価値はあるかなあ、なんて感じがしてます。

それからぬるぬる問題の詳細を知りたいひとはここへどうぞ。

カクトウログ
http://kakutolog.cocolog-nifty.com/kakuto/2007/01/post_6b39.html




2007年01月02日

大晦日の秋山・桜庭戦

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがいスマッシュヒットどまりのくるり。


無駄なギャグがスべったところで、ちょいと大晦日の格闘技番組についてコメントを。


秋山・桜庭戦ですが、テレビで見ていて試合の途中で、桜庭がストップを要請していたのは気づいてました。

グローブでもずれたのかと思ってましたが、そのわりには、試合後の桜庭の怒りっぷりが半端じゃなく、いったい何が起こったんだか、テレビ見てただけではわかりませんでした。

ネット見てみたら、どうも桜庭は

「秋山の体が滑る」

のでチェックするように言ってたみたいです。

ところが、レフェリーは再三にわたる桜庭の要請を無視。
結果、桜庭がボコボコに。

本当に秋山がワセリン塗ってたのかどうかは知りませんが、桜庭は自分が負けそうだからってことで、そういうウソを言う人間には思えませんしね。
それに、秋山は柔道時代にも、相手選手から
「道着がぬるぬるする」と言われて、背番号なしの替えの道着で試合した「前科持ち」ですし。


正直、今の秋山と桜庭の実力を冷静に比較すれば、秋山のほうが上だと思います。
試合前から、私はそう思っていて、それでひどく憂鬱でした。

というのも、桜庭はかつて私のヒーローでしたから。

私はプライドを一番最初の高田・ヒクソン戦から見ています。
それで、最初のプライドからずっと見てきたとき(というかその前のUFCからといってもいいかもしれませんが)、プライド13(シウバに負けたとき)までの桜庭というのは、まぎれもなく「ヒーロー」でした。

「ヒーロー」というのは、「物語を背負った者」のことです。
アニメの主人公たちが、大なり小なりの物語を背負っているのと同じように、あのときの桜庭も物語を背負っていました。

桜庭が背負っていたものはいろいろあるのですが、一つは「プロレス」という物語ですね。
いまの格闘技ファンには理解できないかもしれませんが、かつてはプロレスと格闘技というのは、結構近い存在だったのです。
いや、近い存在であるかのように、プロレスファンはみなしていたというべきでしょうか。
近くに長年の格闘技ファンを自称している「オヤジ」がいたら、確認してみるといいです。
だいたい、そういうオヤジの2人に1人は、かつてのプロレスファンですから。

しかし、桜庭という人はそういう色々なものを背負いながらというか背負わされながらも、あまり辛気臭くならずに軽やかでした。
そこがまた新鮮でよかった。

だけど、シウバに負けたあとの桜庭は黒星を重ねるようにもなり、怪我にも悩まされるようになります。
正直、このころの桜庭のマッチメイクとかはかなり疑問の残るものでした。
明らかなかませ犬との試合もあったし、ヤオじゃないかと疑ってしまうような試合もありました。

そのうえ、背負っていた物語じたいも、意味をなさなくなっていたのです。
今じゃプロレスが最強だなんて信じる人間はどこにもいません。
いま、プロレスという物語を背負っているのは美濃輪くらいのもんでしょうが、彼の場合、コミカルなキャラクターとしての位置づけですから。

まあ、過去の記憶に縛られているだけかもしれませんが、それでも、やっぱ私はサクのことが好きなんです。
本当はもう引退してくれればいいのに、と思っていたりはするんですが。

それで一方の秋山、これ大っきらいです。

秋山のことが嫌いになったのは、元ボクサーのなんとかいう奴(名前おぼえてない)との試合でした。

この無名ボクサーはどっからどう見ても純然たるかませ犬として、秋山と試合しました。
なにしろ、総合初挑戦のボクサー、しかもパンチ力はぜんぜんないです(ボクサーとしてもまったく活躍してません)。
タイソンみたいなハードパンチャーであれば、ファーストコンタクトのときに、緊張感もあるかもしれませんが、へなちょこパンチしか打てないボクサーなんだから、タックルにいくのもぜんぜん怖くありません。
案の定、秋山は試合早々、タックル、テイクダウンに成功。
しかも、するするとパスガードにも成功。
このボクサー、ガードポジションすら理解してなさそう。

あっというまに、マウント奪った秋山は上からパウンド降らします(パウンドというのは寝技でのパンチのこと)。
元ボクサーは、パウンドを嫌がって、下から手を伸ばして、秋山とのあいだに距離をとろうとします。

これから、総合格闘技の試合にでもでてみようかと金子賢ばりの蛮勇をお持ちのかたに忠告しておきますが、相手にマウント取られた状態で、手を伸ばすということは絶対してはいけません。
なぜなら、手を伸ばした瞬間、あなたの上になっている相手は、その手をとって腕ひしぎ逆十字固めをかけてくるからです。
要注意。

秋山は柔道出身なわけですから、当然そのくらい知ってます。
そのうえ、相手はこの程度の基礎知識すらしらない素人。
腕を極めるくらい容易なこと。

しかし、秋山はなぜか腕を取るそぶりすらみせず、パウンドの雨あられ。
たまらず、ボクサーはタップしました。

なんじゃこれ?

明らかなかませ犬に必要以上のダメージを与えるのが柔道家なのでしょうか?
柔道家うんぬん以前に、人間として間違ってると思います。
これが、相手がヒョードルとかの強敵であれば、私もそうは思わなかったでしょう。
そもそも、ヒョードル相手に秋山がマウント取れるとも思いませんが、ヒョードル相手にこういう行為をするのはぜんぜん意味が違います。
相手の心まで折るという戦い方を、残酷だからという理由で否定したりはしません(まあ、この感じかたは道徳的にどうかとは思いますが)。

しかし、この場合、相手はかませ犬なのです。
そもそも、折るべき「心」なんてありません。
ファイトマネーさえもらえばそれでいいとでも思ってる輩です。
だから寝技の基本的な知識すらない。
秋山だって、この試合が「自分を勝たせるための試合」であることくらい承知しているでしょう。
自分を「強者」に見せるために、目の前にこの「弱者」が置かれたことくらい理解してるはずだし、理解してなかったら、それはただのバカです。

自分の「強さ」をこんなかたちでアピールした秋山という人間が私は心底嫌いになりました。


で、上でも書いたように、私は今の秋山は桜庭よりも強いと思ってましたので、この試合見る前から嫌な気持ちでした。
なにしろ、かつてのヒーローが、大嫌いなナルシスト野郎に負けるのを見なきゃいけないわけですから。
ガンダムでたとえるなら、アムロがマ・クベに負けるような感じです。
それって、辛いでしょ?


ところが、秋山のぬるぬる問題によって、この試合はどっちつかずの結果に。
私の気持ちもなんか、微妙です。
ちゃんと覚悟してたのに・・・。


これが試合のレフェリーのブログ

http://blog.livedoor.jp/umekilab/archives/50813800.html#comments

しかし、コメントが5000超えてるって・・・すご

人気記事
    ×

    この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。