PRIDEとUFCが史上最大の合体
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070328-00000007-dal-fight重大発表公開記者会見/3・27PRIDE六本木ヒルズアリーナ速報まとめ
http://kakutolog.cocolog-nifty.com/kakuto/2007/03/327pride_2a39.htmlプライドがUFCに身売りかぁ。
ほぉ。
例のヤクザがらみの事件が発覚してフジテレビが撤退したころから、こうなるだろうことは予想してはいたけれども、やっぱ切ないものがあるなあ。
なんせ数年前はUFCが低迷してて、プライドは絶好調だったし。
あのころは世界最高の総合格闘技イベントといえば、間違いなくプライドだったんだけど。
あの時は、「プライドがUFCを飲み込む」ことは想像できても、その逆は想像できなかった。
今のアメリカでは、UFCの人気がすごいらしいですしねえ。
うーん、変われば変わるもんだな。
プライドのファンって、日本人選手を必要以上にケナすわりに、「プライドは世界一だ」と信じているような、妙にアンビバレントなナショナリズムを持っているんだけれど、彼らはどう反応してるんだろう?
最近、格闘技熱が下がってしまっている状態で、ネットで格闘技関連の情報収集とかもぜんぜんしてないのでよくわからないんだけど。
プライドがアメリカ資本に飲み込まれたのは残念ではあるけれども、格闘技観戦としてはこれからかなり面白いことになるでしょう。
なにせ、プライドとUFCと言ったら、総合格闘技の二大ブランドだし。
その二つの間で交流戦が行われるとなれば、これは見逃せない。
ここ一年くらい、格闘技に対する情熱がクールダウンしてた状態だったんで、また見始めてみようかな?
ついでなので、UFCとプライドの話をちょっとだけします。
これは格闘技ファンには今さらこんなこと、、、、ってな話ではありますが。
UFCとプライドって、選手の格闘技術には多少の特色がある。
大雑把に言うと、
UFCが、レスリングとボクシングを組み合わせた選手が多く、
プライドには、柔術とキックボクシングの組み合わせが多い。
UFCはアメリカの格闘技イベントなんで、当然、アメリカ人選手が多い。
で、もともとレスリングをやってた選手が打撃技術(ボクシング)を習ってUFCに出てくるっていうパターンになる。
アメリカにおけるレスリングって、ちょうど日本における柔道みたいなもんですかね。
アメリカでは、レスリングとボクシングの存在感は大きいですから。
日本では、もともとリングスやK1の招聘ルートがあったので、それを利用する(横取りともいうけど)形でプライドは発展してきた。
ブラジル、オランダ、ロシアあたりの選手がそうした形で、プライドのリングにあがっている。
K1経由でキックボクサー(ミルコ、マーク・ハント)、
リングス経由で柔術家(ノゲイラ、アローナ)って感じですかね。
あとは同じくリングス経由で、サンボ(ヒョードル)ってのもあるけど。
で、こういう背景があると、プライドのほうでは関節技による一本勝ちがでやすく、UFCのほうではパウンドによるKO勝ちが出やすくなる。
まあ、ちゃんと調べてないんで、違うかもしれませんけど、印象としてはこうです。
日本人のファンはパウンドよりも関節技を好むという、嗜好性もあるとは思いますが。
とは言っても、結局のところ、プライドとUFCというのは対立する技術思想を持っている、というわけではないんで、この両団体の交流戦というのは、「看板をかけた戦い」ではない。
交流戦の初期段階では「看板をかけて戦っている」感が、多少はするかもしれませんが、それも徐々に薄れて、混交していくと思います。
技術的な面ではどうなるのかっていうと、これはちょっと予想が難しいなあ。
打撃優位の時代がまだまだ続くのかな?
と思ってたら、東スポにロレンゾ(UFCを主催してるズッファ社のオーナー)のインタビューが載ってた。
それによると、
「PRIDEのルールはラスベガスでやったルール(4点ポジションでの頭部蹴りなし、1ラウンドすべて五分)になるでしょう」
とのこと。
このルール変更はどちらかというと、打撃系に不利かな?
1ラウンド5分というのは、打撃系に有利ですが(テイクダウンしてから関節技を極めるまでには多少の時間が必要)、4点ポジションでの頭部蹴りなし、というのは、シウバ等のシュートボクセ勢にとっては、かなり不利に働くし。
総合格闘技が発展するにつれて、徐々に少なくなっていった「関節技での一本勝ち」ですが、もしこのようにルール改正されたら、関節技優位の方向に多少なりともゆり戻しがあるかもしれない。
それからフリースタイル出身のレスラーも少しだけ有利になる。
知らない人のために説明すると、レスリングにはフリースタイルとグレコ・ローマンっていう二種類がありまして、グレコ・ローマンってのは足に触れてはいけない、というルール。
フリースタイルは、足に触れてもいい、というルール。
だから、グレコ・ローマンの選手はタックルするときは、相手の胴体に組み付くようにタックルする(相撲のさしあいみたいな感じで)んだけれども、フリースタイル出身の選手は、相手の足にタックルするわけです。
で、4点ポジションでの頭部蹴りありのルールだと、足にタックルしたときに、相手にがぶられた(覆いかぶせられる)場合いちばん危険な状態になる。
がぶられた状態でヒザ蹴りをくらってしまうから。
有名なフリースタイル出身のレスラーというと、桜庭とかKIDとかがそう。
プライドの初期は4点ポジションでの頭部蹴りなしのルールだったんで、フリースタイル出身のレスラーがかなり活躍してた。
マーク・ケアー(当時は最強と呼ばれてた)、藤田(ヘビー級の日本人で最も成果を出した選手)、マーク・コールマン(初代プライド王者、今じゃ誰も思い返さないけど)などなど。
あ、それにもちろん桜庭も。
ところが、プライド13で4点ポジションでの頭部蹴りありにルールが変更されると、その勢力図が一変。
足タックルという、それまでとても有効だったテイクダウン技術が、「もし失敗してがぶられるとそのまま膝蹴りを喰らう」という、かなり危うい技術になってしまった。
それを象徴するのが、このプライド13で初めて負けた桜庭(相手はシウバ)でした。
この試合で、桜庭は4点ポジションからの膝蹴り、サッカーボールキック等によって、惨敗。
以降、勝ち星に恵まれなくなる。
ちょっとしたルールの変更で、有効な技術体系というものが変わってしまう、ってことを実感しました。
ちなみに、私が総合格闘技に面白さを感じていた理由というのは、こういうところです。
可変性と言ったらいいのか、進化していく過程といったらいいのか。
歴史が浅い格闘技であるだけに、総合格闘技というのは常に変化し続けていた。
たとえば最初は打撃技術なんて、総合格闘技では無意味だと思われてました。
重要なのは、タックルによるテイクダウン技術(主にレスリング技術)と、寝技におけるポジショニングと関節技の技術(柔術)だけ。
みんな、そう思っていたし、私もそう思っていた。
佐山という日本の格闘技の歴史を語るうえでは欠かせない人がいるんですけど、彼がかなり早い段階で、
「これからの総合格闘技では打撃の時代がくる」
と言っていたときには、その意味が理解できなかった。
その時の私は、総合格闘技は「グラップラー(組み技系の格闘家)」のもので、打撃系の選手なんて総合で大成できるわけがない、と思ってた。
本当に強いのは寝技の出来るやつで、ボクサーやキックボクサーなんて、所詮は限定されたルールのなかでだけ、「強さ」を発揮できるにすぎない。
そう思ってた。
それが、まさか佐山の予言どおりに打撃優位の時代がくるなんて思ってなかった。
シウバの活躍もそれなりに既成概念を揺さぶられましたが、やっぱりショッキングだったのはミルコ。
純粋な打撃系選手が総合であそこまで通用するとは思ってなかった。
やっぱり天才(佐山)と凡人(私)では見えてる風景が違うんだなあ、と実感させられました。
まあ、こんなふうに総合格闘技というのは、常に変化しつづけ、また進化しつづけてきたわけで、そこが私が魅力を感じてきた理由です。
ボクシングのような歴史のある格闘技では、こういう「競技自体の変化(進化)」っていう現象はほとんど見られないですから。
ただ、ボクシングには「競技としての進化」がないかわりに、「昔の試合でも内容が充実している」という良さがある。
たとえば、80年代の中量級って、レナード、ハーンズ、ハグラー、デュランと、すごいボクサーがそろっていて、「黄金の中量級」なんて呼ばれていたんだけれども、彼らの試合を見ると今でも十分面白い。
というか、今のボクシングよりも面白く感じるくらい。
一方、プライドのいちばん最初の大会って、1997年なんだけど、これは今じゃとても見られたもんじゃない。
あまりのレベルの低さに唖然とする。
進化する、ということは、直近の過去を陳腐化していく、ということでもあるので、こういうことになる。
総合格闘技を見る面白さとボクシング等の歴史のある格闘技を見る面白さというのは、面白さを感じるポイントがちょっとずれてるんです、私の場合。
逆に言うと、最近、私が総合に興味を失くしてたのは、総合の進化ってのが止まったように見えたからなんですけど。
言い換えれば、総合格闘技というものが、ボクシング化している、っていうことかもしれない。
UFCとプライドの交流戦で、私の総合熱も蘇るのでしょうか?
個人的な希望でいえば、関節で一本とるタイプの試合が増えてくれるといいかな?
たとえば、この青木真也みたいな。
しかし、上手いなあ。
フットチョークなんて初めて見たよ。